埼玉県立近代美術館「ベン・シャーン展」
先日、埼玉県立近代美術館で「ベン・シャーン展」を観てきました。
今回の展覧会は丸沼芸術の森のコレクションからの出展で、初期の油彩画やテンペラ画、デッサン、ドローイング、版画、ポスターや絵本ばかりでなく、それら原画や壁画の下絵など、ベン・シャーンの手がけた沢山の作品に接することのできる大変見応えあるものでした。
私がベン・シャーンを知るきっかけとなった版画集《リルケ『マルテの手記』より一行の詩のために》も全作品が展示されており、数年前に初めてブリヂストン美術館で目にした時の感動がよみがえりました。
その後、第五福竜丸の被爆をテーマにした絵本『ここが家だ』にも出会いましたが、今回の展覧会は、ベン・シャーンが、そのラッキードラゴンのシリーズをはじめ、貧困や差別、権力者による不正など社会的メッセージを訴え続けたアーティストだったということを改めて知る大変いい機会となりました。
また、社会的テーマを扱った作品ばかりでなく、娘スザンナちゃんが口ずさんだ歌から創った絵本など、とても可愛らしい挿絵の原画も数多く出品されていて、温かで優しさにあふれた作品からはベン・シャーンの人となりを更に深く感じることができました。
ところで、今回、数多くのドローイングや版画の原画などを観て、彼の作品の特徴の一つである線の魅力にも目を奪われましたが、その斬新な構図にも強く感心させられました。
一歩まちがったら、ありゃりゃ~となってしまいそうな難しい構図が絶妙なバランスで納まっていて、思わず上手いな~とうなってしまいました。
そして、絵本に添えられている彼独自の書体が、これまたとってもステキでした。
絵と文字がイイ感じに調和していて、一枚一枚自分の手でページをめくってみたいな~と思わずにはいられない、それはそれは魅力的な絵本たちでした。
それから、展覧会カタログがシンプルだけど暖かみのある絵本のような作りで、何だかとても気になり、つい誘惑に負けて買ってしまいました~
話は変わって、埼玉県立近代美術館におじゃましたのは今回が初めて。
JR北浦和駅にほど近い公園の奥に美術館はありました。
赤や黄に色づいた木立の中に点在する彫刻作品や大きな噴水に目をやりながら進んでいくと、木々の間にカッコイイ建物が見えてきます。
そのシャープな外観を持った美術館建物は黒川紀章さんの1982年の作品で、一見直線的ですがエントランス内部へ進み入ると曲線を繋いだガラス張りのファサードが現れ、後の作品である六本木の国立新美術館の外観を彷彿とさせるものがありました。
波打つガラス面には外側の柱や梁だけでなく周囲の木々が映り込み複雑な線を生み出していて、なかなかステキでした。
また、ピカソやモネ、デルボーなどヨーロッパの作品から佐伯など日本の作品、更には屋外展示場の彫刻作品と所蔵作品も充実していて楽しめました。
そして最後のきわめつけが、帰り際、ロッカールームで見つけた不思議な物体。
37番のロッカーの中にピカピカ点滅しているのは一体何でしょう?
ほんとに来館者が預けたのでしょうか?
それとも、これも作品?
【追記】マイミクでFBでも友達にさせていただいているパパゲーノさんより耳寄り情報いただきました〜♪
ピカピカ37番ロッカーは、現代美術家 宮島達男(1957〜)さんの作品"Number of Time in Coin-Locker"(1996年)だということが判明。う〜ん、やられちゃいました。さすがです!楽しいです!
宮島さんはLEDのデジタルカウンター等をよく作品に使われているそうで、もしかして私もこれまでに東京都現代美術館などで他の作品も目にしていたのかも?!(2012.12.02追記)
【関連エントリ】
ブリヂストン美術館「コレクションの新地平 − 20世紀美術の息吹」(2008.03.10)
ベン・シャーン&アーサー・ビナード『ここが家だ』(2008.08.25)
The National Art Center. Tokyo(2007.04.16)