21 May 2013

東京国立近代美術館「フランシス・ベーコン展」

Baconここしばらく大きな展覧会に足を運んでいなかったので、久しぶりに竹橋の近代美術館に行って来ました。

フランシス・ベーコン(1909年~1992年)

かろうじて名前と代表作を図版で知っていた程度で、実物の作品を観るのは初めて。
先入観なしのまっさらな気持ちで展示室に足を踏み入れました。

100号を超える大きな作品がずらりと並んでいるけれど威圧感がないのは大きさの割にはサラッと描かれているからなのか? 程よい間隔をとって展示されていたからなのか?
制作過程では画家のなかで様々な試行錯誤があったに違いないけれど、出来上がった作品を観る限りでは「肩に力が入ってなくていいな~」という印象を持ちました。

絵を描くようになってから、私自身のなかで絵画鑑賞のスタンスが大きく変化し、特に近ごろは、絵画は視覚芸術なのだから、あれこれ言葉による説明はいらないと思うようになりました。
だから、作品につけられていたキャプションは読みませんでした。作品名も見忘れました。

そういえば、会場内は比較的若い層の来館者が多く、丁寧にキャプションを読み、静かに画面に見入っていて、そこそこの人の入りなのに、シ~ンと静まりかえっていたのが印象的でした。
ベーコンの絵は、画面にあふれる感覚的な何かを読み取るという作業ではなく、じっくり考えることを強いられる作品だったのかもしれません。

だからなのか、私は今回の作品群から、残念ながら、言葉では説明できないようなハッとさせられる刺激や新鮮さを得ることはできませんでした。
ん〜 ただ単に私の感性が鈍っただけかな?!

エピローグのウィリアム・フォーサイスのダンスのインスタレーションは観られて良かったです。

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26 November 2012

埼玉県立近代美術館「ベン・シャーン展」

Ben_shahn2012先日、埼玉県立近代美術館で「ベン・シャーン展」を観てきました。

今回の展覧会は丸沼芸術の森のコレクションからの出展で、初期の油彩画やテンペラ画、デッサン、ドローイング、版画、ポスターや絵本ばかりでなく、それら原画や壁画の下絵など、ベン・シャーンの手がけた沢山の作品に接することのできる大変見応えあるものでした。

私がベン・シャーンを知るきっかけとなった版画集《リルケ『マルテの手記』より一行の詩のために》も全作品が展示されており、数年前に初めてブリヂストン美術館で目にした時の感動がよみがえりました。

その後、第五福竜丸の被爆をテーマにした絵本『ここが家だ』にも出会いましたが、今回の展覧会は、ベン・シャーンが、そのラッキードラゴンのシリーズをはじめ、貧困や差別、権力者による不正など社会的メッセージを訴え続けたアーティストだったということを改めて知る大変いい機会となりました。

また、社会的テーマを扱った作品ばかりでなく、娘スザンナちゃんが口ずさんだ歌から創った絵本など、とても可愛らしい挿絵の原画も数多く出品されていて、温かで優しさにあふれた作品からはベン・シャーンの人となりを更に深く感じることができました。

ところで、今回、数多くのドローイングや版画の原画などを観て、彼の作品の特徴の一つである線の魅力にも目を奪われましたが、その斬新な構図にも強く感心させられました。
一歩まちがったら、ありゃりゃ~となってしまいそうな難しい構図が絶妙なバランスで納まっていて、思わず上手いな~とうなってしまいました。

そして、絵本に添えられている彼独自の書体が、これまたとってもステキでした。
絵と文字がイイ感じに調和していて、一枚一枚自分の手でページをめくってみたいな~と思わずにはいられない、それはそれは魅力的な絵本たちでした。

それから、展覧会カタログがシンプルだけど暖かみのある絵本のような作りで、何だかとても気になり、つい誘惑に負けて買ってしまいました~

Saitama_kindai01話は変わって、埼玉県立近代美術館におじゃましたのは今回が初めて。
JR北浦和駅にほど近い公園の奥に美術館はありました。
赤や黄に色づいた木立の中に点在する彫刻作品や大きな噴水に目をやりながら進んでいくと、木々の間にカッコイイ建物が見えてきます。

Saitama_kindai02そのシャープな外観を持った美術館建物は黒川紀章さんの1982年の作品で、一見直線的ですがエントランス内部へ進み入ると曲線を繋いだガラス張りのファサードが現れ、後の作品である六本木の国立新美術館の外観を彷彿とさせるものがありました。

Saitama_kindai03波打つガラス面には外側の柱や梁だけでなく周囲の木々が映り込み複雑な線を生み出していて、なかなかステキでした。

また、ピカソやモネ、デルボーなどヨーロッパの作品から佐伯など日本の作品、更には屋外展示場の彫刻作品と所蔵作品も充実していて楽しめました。

Saitama_kindai04



そして最後のきわめつけが、帰り際、ロッカールームで見つけた不思議な物体。
37番のロッカーの中にピカピカ点滅しているのは一体何でしょう?
ほんとに来館者が預けたのでしょうか?
それとも、これも作品?

【追記】マイミクでFBでも友達にさせていただいているパパゲーノさんより耳寄り情報いただきました〜♪
ピカピカ37番ロッカーは、現代美術家 宮島達男(1957〜)さんの作品"Number of Time in Coin-Locker"(1996年)だということが判明。う〜ん、やられちゃいました。さすがです!楽しいです!
宮島さんはLEDのデジタルカウンター等をよく作品に使われているそうで、もしかして私もこれまでに東京都現代美術館などで他の作品も目にしていたのかも?!(2012.12.02追記)

【関連エントリ】
ブリヂストン美術館「コレクションの新地平 − 20世紀美術の息吹」(2008.03.10)
ベン・シャーン&アーサー・ビナード『ここが家だ』(2008.08.25)
The National Art Center. Tokyo(2007.04.16)

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17 August 2012

茨城県近代美術館「須田国太郎展」

Kuni_sudaお盆休みの最終日、水戸に行ってきました!
今年5月に亡くなられた音楽評論家の吉田秀和さんが館長を勤められていた水戸芸術館や茨城県近代美術館のことは以前から気になってはいたけれど、なかなか出かけてゆくチャンスのないまま月日だけが経ってしまいました。
そんな折、茨城県近代美術館で須田国太郎の大規模な回顧展が開かれていることを知り、それならばと思い切って足を運んでみました。
それにしても、水戸はやっぱり遠かったぁ~

さて、JR水戸駅から歩くこと約15分。
千波湖を望む高台に建つドッシリとした佇まいの茨城県近代美術館は、お盆休み中とは言え平日のためか来館者も疎らで、企画展も常設展もゆったりと観ることができました。
人混みが苦手な私にとっては最高の環境。須田国太郎の作品もジックリ鑑賞できました。

Inu_suda須田国太郎(1891〜1961)の主題を墨色のシルエットで前景に配し明るい背景で輪郭線を際立たせる手法や絵具を掻き削ったマチエールには惹かれるものがあり以前から好きな画家の一人でした。
しかし、私が知っていた須田作品といえば東京国立近代美術館に所蔵されている《犬》《法観寺塔婆》 《書斎》など代表作ばかり。今回はじめてスペイン留学時代の作品やエル・グレコ、ティツィアーノ、ゴヤなどの模写、色鮮やかな薔薇や里山の風景、鳥や動物と様々な主題に取り組んだ画家だったことが分かりました。

須田は京都帝国大学及び大学院で美学美術史を学ぶ側ら関西美術院でデッサンの勉強もし、当時、多くの画家が挙ってフランスのパリを目指していたにもかかわらず、留学先にはスペインのマドリードを選んだそうです。

Shosai_suda私が竹橋で《書斎》を初めて目にした時、図像学的意味が織り込んでありそうなモチーフの扱いや画面構成が、制作された時世に反して何となくバロック的だなという印象を持ったのですが、スペインを拠点にヨーロッパ各地の美術館でたくさんの美術作品に接していたと知り、なるほど!やっぱりそうだったのか!と納得しました。

実は私、ひそかに左手前に描かれている薄緑色の物体は髑髏ではないかと思っています。髑髏と本と言えば西洋絵画ではヴァニタスを意味するお馴染みのモチーフ。けれど日本では受け入れられないだろうと考えて後から潰したように見えるのです。

それはさておき、須田は一時、制作以外の仕事で多忙を極め自ら危機を感じたこともあったようですが、40歳代半ばを過ぎたころから独自のスタイルが現れはじめ、その後の作品はどれも秀作揃い。とても見応えのある展覧会でした。

【画像】
《犬》1950年、東京国立近代美術館所蔵
《書斎》1937年、東京国立近代美術館所蔵

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20 July 2012

神奈川県立近代美術館 葉山館「松本竣介展」

Shunsuke_matsumoto先日、葉山まで足を伸ばし「松本竣介展」を観てきました。

海の日を含めた三連休は梅雨明け前だというのに真夏を思わせる陽ざしに恵まれ、JR逗子駅は海水浴に向かう若者たちや小さな子供を連れた家族連れでいっぱい! 長い行列の出来た駅前のバス停から「神奈川県立近代美術館 葉山館」へ向かうバスに何とか乗り込みました。

神奈川県立近代美術館 葉山館を訪ねるのは今回で2度目。2006年の「パウラ・モーダーゾーン=ベッカー展」以来なので6年ぶりの再訪です。
この美術館、海岸沿いの恵まれたロケーションを活かした建物といい、ゆったりとした展示室といい、とても気持ちよく鑑賞できる空間が用意されています。今回の「松本竣介展」も、この晩秋、東京の世田谷美術館に巡回して来るのは分かっていましたが、折角ならばステキな美術館で心置きなく鑑賞したいと考え、はるばる時間をかけて足を運びました。

さて、肝心の展覧会も、松本竣介生誕100年を記念して企画された回顧展だけあり、大変見応えがありました。
これまでにも松本竣介(1912~1948)の作品は竹橋の東京国立近代美術館に所蔵されている何点かを目にしていましたが、今回はじめて、絵の勉強を始めた少年時代の作品から、黒い太い線を使った作品、繊細な線描と色面を組み合わせた洒落た作品、幼い息子の絵からインスピレーションを得て制作した作品など観ることができ、36年という短い生涯において常に研究や模索をつづけ様々な様式の作品を残した画家であることを知りました。

特に青緑と白を使った風景画はとても魅力的でした。あの清々しい色は何と何を組み合わたら出せるのだろう?と考え出したら、なかなか作品の前から立ち去ることが出来なくなってしまいました。
松本竣介って、ずっとモノトーンのどこか寂しげな都会風景や自画像を描く画家というイメージを抱いていたので、美しい色も使える画家だと分かったことも収穫でした。

第二次世界大戦下の過酷な時代に強い意志と決意を持って生きた画家松本竣介。
その充実した創作活動からパワーをもらいました。

【関連エントリ】
神奈川県立近代美術館 葉山館「パウラ・モーダーゾーン=ベッカー展」

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11 July 2009

東京国立近代美術館「ゴーギャン展」

Gauguin早めの夏休みをとって「ゴーギャン展」へ行ってきました♪

時間に追われることなく平日の美術館で一日の大半を過ごすことができるなんて、ホント幸せ♪ 久しぶりにアートライブラリにも立ち寄ることができ、以前から気になっていた調べものも片付いてスッキリ!
来る日も来る日も、こんな生活のおくれる身分に早くなりたいものだ~(^^;;;

それはさておき、国内外の秀作が数多く集められた「ゴーギャン展」は、とても見応えがありました。

特に、1897年に家族の中で一番の理解者だと思っていた最愛の娘アリーヌを亡くし落胆したゴーギャンが自殺を決意した上で制作した大作《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》(1897〜98年、139.1×374.6)は圧巻でした。

以前から、ゴーギャンの作品、特に油彩画には惹かれるものがあり造形的には好きな画家だったのですが、人としてのゴーギャンには共感できないところが多々ありました。
しかし、今回《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》を観たり、改めて『ゴーギャンの手紙』(東珠樹訳編、1988年、美術公論社)や『ゴーガン私記 ―AVANT ET APRES―』(前川堅市訳、1984年、美術出版社)を読んでみたところ、「ゴーギャンて、そんなに悪い人間ではなかったのかも?」と、これまで抱いていたイメージが少し変わりました。

それから、『ノア・ノア』の連作版画の展示も良かったです。
ゴーギャン本人による自摺り、ルイ・ロア版、ポーラ版と、同じ版木を使った三種類のバージョンを比較して観ることができ、とても興味深かったです。
自摺りのものは、ぼやけていたりダブっているように見える箇所もあるのですが、かえって、それが表現としての面白さを出しているように感じました。
30版刷られたルイ・ロア版は、ステンシルによる赤と黄の鮮やかな彩色が施されていて、これもまた魅力的でした。
100版刷られた息子ポーラによる機械刷りのものは、彫りの細部まで確認することができ、三種それぞれの異なる味わいを堪能できました。

【関連エントリ】
ポール・ゴーギャン(東珠樹 訳編)『ゴーギャンの手紙』

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08 July 2009

川越市立美術館&川越散歩

Kawagoe06先日、川越市民会館で開かれた知人のピアノ・リサイタルを聴きに、川越まで行って来ました♪

川越となると・・・
なかなか、そう簡単には足を運ぶことが出来ないので、よし!折角の機会だからと少し早めに家を出発し、開演前に川越市立美術館の「相原求一朗記念室」にも立ち寄ってみました。

Kawagoe03蔵造りの街並みが続く界隈は、それはそれは凄い人通りでしたが、街の中心から少し離れた(と言っても徒歩で10分程度(^^;;)川越市立美術館や隣接する川越市博物館まで、わざわざ足をのばす物好きはいないのか? 私以外だ〜れもいない恵まれた環境のもと、久しぶりに相原求一朗の作品を鑑賞できました。

Kawagoe01常設展示室と相原求一朗記念室は、年に4回の展示替えがあるそうで、今回、私は第2期を観させていただきました。

現在、常設展示室ではシャガールやルオーをはじめ難波田龍起ら日本の作家の版画を観ることができ、第2期期間中を更に前期(6/26〜8/9)後期(8/11〜10/4)に分けて展示替えするようです。随分たくさん所蔵しているのですね〜(^^)

Kawagoe02
記念室の相原求一朗(1918〜1999)の作品は、全十数点と決して多いとは言えない数でしたが、昭和20年代のものから平成9年の晩年のものまで相原の作風の変遷をたどれる展示になっていて、どのスタイルも魅力的で目移りしてしまいました。

第4期(2010/1/5~3/28)は、常設展示室で相原の鉛筆やパステルなどで描いた素描類と油彩画が公開され、なんと(まだ予定のようですが(^^;)記念室には北海道の相原求一朗美術館から代表作《北の十名山》がやってくるようです。今から楽しみ♪

Kawagoe04ところで、川越の街は江戸情緒あふれる蔵造りの建物ばかりでなく近代建築も数多く残っていて、思いがけず楽しい散策が出来ました。
次回は川越城址や喜多院も訪ねてみようかな?

Kawagoe05【写真】上から
川越市立美術館&博物館
旧第八十五国立銀行(現埼玉りそな銀行川越支店)1878年
田中屋美術館
旧山吉デパート
小江戸巡回バス
路地裏

【関連エントリ】
日本橋高島屋「相原求一朗展」

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19 May 2009

汐留ミュージアム「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」

Vories私がウィリアム・メレル・ヴォーリズ(William Merrell Vories 1880~1964)を知ったのは、確か、一昨年、大阪・神戸・阪神間を旅した時だったと思う。

何冊ものガイドブックを傍らに旅のプランを練り始めて直ぐ、心斎橋の大丸さん、日本基督教団大阪教会、神戸女学院大学、六甲山荘、旧神戸ユニオン教会など、それらに漏れなく付いてくる「ヴォーリズ建築」という表記が、ページをめくれば他にも頻繁に出てくることに気がつきました。
そして、そこに添えられた小さな写真には「実物を見てみたい!」と思わずにはいられない魅力がありました。

結局、旅の限られた時間の中、訪ねることが出来たのは僅か2箇所でしたが、その後しばらく私のヴォーリズ熱は納まらず、関連本を探しては読み漁っていたころ思いがけず出会ったのが山形政昭(監修)『ヴォーリズ建築の100年―恵みの居場所をつくる』(2008年、創元社)でした。
そして先日、待ちに待った東京での巡回展へ行ってまいりました♪

汐留ミュージアム「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」

   ◇  ◇  ◇

結論から言ってしまえば、ヴォーリズ熱再燃!

「最小限の住宅設計」として実験を兼ねて建てられた今も軽井沢に現存している「九尺二間」とも呼ばれた《旧ヴォーリズ山荘》(現 浮田山荘、1922年)の実物大模型は、ホントにホントに小さくて「何て可愛らしい山荘なんだろう。確かに狭くて簡素ではあるけれど、その分、窓から見える森の景色や小鳥のさえずりを、たっぷり堪能できそう。」と楽しい想像をさせてくれました。

また、パネル展示された教会や学校、個人住宅などの代表作からも、ヴォーリズが建築の専門教育を受けたことのないアマチュア建築家だったからこその自由な遊び心や、あくまで人間優先の温かみある独特の魅力が伝わってきました。

最初は英語教師としてアメリカから滋賀県立八幡商業学校に赴任してきたヴォーリズが、やがて近江八幡に根をおろし、建築家として、実業家(メンタームで知られている近江兄弟社(旧 近江ミッション)を設立)として活躍したばかりでなく、キリスト教の伝道にも熱心に携わった志高く多彩な才能の持ち主だったことにも感心させられました。
そうそう! ヴォーリズは、同志社大学のカレッジソングの作詞まで手がけているんですよ。音楽も大好きで自らピアノを演奏したそうだし、展覧会場にはヴォーリズ筆の静謐な油彩風景画も展示されていました。本当に何でも出来ちゃう人だったのですね。

そんな訳で、とても見応えある展覧会だったのですが、やっぱり建築は実物を体感しなければなぁ・・・
という欲求不満が湧いてきたのも事実。
もう一度、大阪や神戸、そして西宮、京都、軽井沢にあるヴォーリズ建築を見てみたいし、何はさておき近江八幡を訪ねない訳にはいかないぞと思いました。
おっと、その前に東京や横浜にあるヴォーリズ建築も再訪しておかなければ♪

【関連エントリ】
山形政昭(監修)『ヴォーリズ建築の100年』
神戸大阪の旅2007

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28 April 2009

東京国立博物館「国宝 阿修羅展」

Touhaku01この春、奈良 興福寺の「阿修羅像」が、はるばる東京へお越しになられていることは知っていたのですが・・・
混みあう企画展は、どうも苦手。
それに阿修羅さまとは、昨年、興福寺の国宝館で、ゆっくり至福の時を過ごしたばかり。(=^^=)

どうしよう・・・
行くべきか? やめるべきか? それが問題だ!

でも、行かないで後悔するより例え人垣の後ろの方からでもいいから、お姿を拝見して来よう!ということで、比較的すいていると聞いた日曜日の夜間見学時間帯を狙って出かけてみました。

やっぱり行ってよかった♪

Touhaku02トンネルを抜け薄暗い展示室に入ると、博物館だからこそ可能なライティングによって、何とも言いようのない仄かな金色の輝きを放つ阿修羅像が、静かに立っておられました。

その凛とした姿は、まぎれもなくあの阿修羅さま♪ 感動〜

一段高くなった所から、真正面の顔をジッと見つめることもできたし、何より、ガラスケースで遮られることなく360度どの方向からも鑑賞することができたのは、とてもありがたいことでした。

そして、今回、真横から見て解ったのが、背中側に重心が片寄っていて、ちょっぴり不安定な像だったということ。この姿勢で立ち続けるのは、流石に阿修羅でも辛そうだなぁ〜なんて、ついつい要らぬことまで考えてしまった私でした。

Touhaku03さて、この企画展、素晴らしかったのは阿修羅像だけではありません。

時は下って鎌倉時代。康慶作「四天王像」の力強くカッコイイこと!
細長い展示室の奥行きを活かして配置された四体の像と「薬王菩薩立像」の展示の仕方が、なかなか絶妙で、劇的な効果をあげていました。
差し詰め、こちらはヴェルフリンの対立概念で言うところのバロック様式。そして、奈良時代の十大弟子像と八部衆像の展示室は、安定感ある古典様式か?(^^)

そうそう、忘れてはいけない。
阿修羅像を発願した光明皇后の母 橘三千代が拝んでいた法隆寺所蔵の飛鳥時代の仏像「阿弥陀三尊像」と、その「厨子」も出品されていて、保存状態も大変良く、とても見事でした。

【関連エントリ】
私の《阿修羅像》
阿修羅像と興福寺

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05 January 2009

初詣では美術館へ♪

Nakamura_tsune1新しい年が明けました。
おくればせながら、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

アメリカの金融危機や国政の失敗に端を発する諸問題やイスラエルのパレスチナ攻撃など心の痛むニュースで始まってしまった年頭、ささやかながら家族そろって健康で和やかな新年が迎えられたことに改めて感謝し、今年こそ平和で誰もが笑顔で暮らせる良い年になりますようにと願わずにいられない元日でした。

Nakamura_tsune2新年2日目は、さっそく60号の制作に取り掛かるべく準備開始。
年末、せっかくキレイさっぱり片付けたリビングルームは、早くもモチーフや画材でゴチャゴチャに!
でも、すんなり構図も決まって描く気まんまんです。
今年は、ちょっと考えるところあって少し方向転換を図る予定。

Saeki_yuzo新たな試行錯誤が始まりますが、これからも自分の気持ちと率直に向き合い、勉強を続けて行くつもりです。

3日は、昨年の夏、アメリカで見つかったばかりの天璋院篤姫の乗り物が展示されている特別展「珠玉の輿〜江戸と乗物〜」を観に江戸東京博物館へ。

Paul_klee4日は、東京国立近代美術館へ初詣でに行ってきました。

今、中村彝の《エロシェンコ氏の像》(1920年、東京国立近代美術館所蔵)と鶴田吾郎の《盲目のエロシェンコ》(1920年、株式会社中村屋所蔵)の2点が並べて展示されている滅多にないチャンスだったと思い出したからです。

中村彝の作品は、これまでにも何度か観るチャンスがありましたが、鶴田吾郎の作品を見たのは、今回が初めてでした。

Paul_klee2_2彝のものが、ほぼ正方形の15号位なのに対して、鶴田吾郎のものは一回り大きい20号位の縦型でした。
描かれた角度の異なる二枚のエロシェンコ氏の肖像を交互に見比べていたら、下落合のアトリエでエロシェンコさんを囲んで制作する2人の画家の筆を走らす音が聞こえて来るかのようでした。

また、鶴田吾郎の作品同様、株式会社中村屋が所蔵している中村彝の《少女》(1914年)も出品されていて、モデルとなった俊子へ彝が思いを寄せていたことを、ふと思い出しました。

残念ながら、中村屋さん所蔵の作品は撮影が許可されていなかったので、中村彝の《エロシェンコ氏の像》の画像しかカメラに収めることはできませんでした。
興味のある方は、今月12日まで 4階の特集コーナー「新宿中村屋につどった人々—大正時代の芸術サロン」に展示されていますので、是非、実物をご覧になってください。

Kogeikan1ところで、この日の近代美術館は無料入館日だったにもかかわらず館内はとても空いていて、前日の江戸東京博物館の混雑ぶりとは大違い! 静かにゆったりと心ゆくまで作品が鑑賞できました。

Honmaruatoその後も、あんまりお天気が良かったので、旧近衛師団司令部庁舎(1910年)の建物を再利用している東京国立近代美術館工芸館にも足を伸ばし珠玉の名品で目の保養をし、そろそろ帰路につこうと東西線竹橋駅に向かって歩いている途中「そうだそうだ!もしかして、このお濠の向こうは篤姫(実は、昨年、NHK大河ドラマに嵌まりました。)が住んでいた江戸城じゃなかったっけ?」と気がつき、北桔橋門から城址に入り、ほころびはじめたフユザクラやロウバイの花を眺めながら歩きました。

Tenshudai現在は、よく手入れの行き届いた芝生の広場になっていますが、僅かに残る番所建物や天守台の跡などから、その広大な江戸城の規模を推し量ることができ、思いがけない楽しい散策になりました。

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29 December 2008

ギャラリー間「安藤忠雄建築展」

Tadao_andou 建築家安藤忠雄の実質的デビュー作《住吉の長屋》(1976年)の原寸大模型が展示されていると聞き「安藤忠雄建築展 挑戦−原点から−」へ行ってきました。

大阪の下町にある三軒長屋の中央部分に造られた家は写真や映像から想像していた以上にコンパクト。
余分なモノを置くスペースもないと言うより置きたくなくなるようなシンプルでスタイリッシュな造りなのですが、なんか可愛い♪というのが第一印象でした。

雨が降れば別の部屋にゆくにも傘をささなければならないし「寒い時は一枚着てください。更に寒い時は、もう一枚着てください。それでも寒い時は諦めてください。」と施主に安藤さんが言ったほど、自然と一体化した風通しの良すぎる造りなのだけど「私、そんなこと全然へいき〜 住んでみた〜い♪」と思うステキな家でした。

会場には、他に《光の教会》(1989年)の縮尺模型をはじめ、安藤作品の写真や図面なども数多く展示されていて、いつの間にか、東急東横線渋谷駅(2008年)、本郷の東大情報学環・福武ホール(2008年)など、私の身近な所に安藤作品が次々に出来たことも知ることができ、東京街歩きが楽しみになりました。

今後、竣工が楽しみだなと思ったのは、イタリア・ヴェネツィアの《プンタ・デラ・ドガーナ再生計画》。(2009年竣工予定)
ヴェネツィアを訪れたことのある人だったら、まず間違いなく目にしているサン・マルコ広場の対岸に位置する15世紀に建てられた「海の税関」を現代美術館に改造するプロジェクトだそうです。
歴史的建造物保存に関わる法律の制約のなか、建物の持つ潜在力を活かし、かつ現代性のある空間を生み出すことに主題がおかれているそうで、これって正にレスタウロですね♪

ギャラリー間(乃木坂)での展覧会は12月20日で終了してしまいましたが、大阪のTOTOテクニカルセンター大阪(2009年 2月11日〜 3月7日)に巡回するそうです。
ただ《住吉の長屋》の原寸大模型は東京のみの展示です。

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