03 October 2012

ベンジャミン・ブリテン《ピーター・グライムズ》@新国立劇場

Peter_grimes2012年10月2日(火)
新国立劇場 オペラパレス

新国立劇場、新シーズン幕開けの《ピーター・グライムズ》 とても素晴らしい公演でした♪
集団による誹謗、阻害、孤立、経済的貧しさ、虐待と、重く深刻なテーマを扱った作品ですが、美しい音楽と洗練された演出に魅了されました。

まず何と言っても、ブリテンの音楽がステキ♪
その表現方法の豊かさ巧みさに、どこからそんなに沢山のアイディアが浮かんでくるの?と感心させられました。ブリテンらしい音の重なりはハッとするほど美しく、第一幕第二場で歌われたピーターのアリアには思わずうっとり。
合唱、重唱もバランスよく配されていたし、たっぷりとオーケストラを聴くこともできるし、ホント贅沢な作品をブリテンは創ってくれました♪

演出も好みでした。集団の動きが効果的に使われ、限られた数色で構成された舞台美術も良かったです。
モノトーンの世界はイギリス東海岸の小さな漁村の陰鬱な雰囲気が感じられ、高い壁に挟まれた空間は閉塞感や疎外感を現わしているようでした。
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵画を思い起こさせる背景や傾いた壁とのバランスも絶妙で、シンプルな舞台装置なのに、そこから発せられるものは、とても大きなものでした。

タイトルロールのスチュアート・スケルトンさんは大きな身体で熱演。もちろん歌も良かったけれど終幕での錯乱し自殺へと追い詰められゆく場面の演技も素晴らしかったです。

それにしても、本当に重たいテーマの作品でした。今の私たちの身近にいくらでもありそうな問題がつまっていて身につまされる思いがしました。
せめてもの救いは孤独なピーターを、ずっと支えようとした理解者エレンの存在です。
しかし、そのエレンも、ピーターの死後、集団の中に身を置いたのには、ああ、やっぱりそうなんだ~と、あれこれ考えさせられました。
生きるって本当に大変・・・

   ◇  ◇  ◇

ベンジャミン・ブリテン《ピーター・グライムズ》

指揮:リチャード・アームストロング
演出:ウィリー・デッカー

ピーター・グライムズ:スチュアート・スケルトン
エレン・オーフォード:スーザン・グリットン
バルストロード船長:ジョナサン・サマーズ
アーンティ:キャサリン・ウィン=ロジャース

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

【関連エントリ】
ザルツブルク音楽祭2005 ヴェルディ《椿姫》(2006.01.05)
B.A.ツィンマーマン《軍人たち》@新国立劇場(2008.05.08)

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20 March 2012

ワーグナー《さまよえるオランダ人》@新国立劇場

Hollander022012年3月20日(火・祝)
新国立劇場 オペラパレス

ぽかぽかと温かな春の陽気になった休日の午後、新国立劇場で《さまよえるオランダ人》を観て来ました。
2007年のプレミエを観てから5年も経ったのですね。ひびのこづえさんの衣裳デザインが結構気に入ったプロダクションだったので舞台美術は良く覚えていましたが、音楽はすっかり忘れてました。
何か全然ワーグナーっぽくないんですけど?って思ってしまったのは、なぜだろう?

キャストも良かったし、音楽的にも、まずまず楽しめました。
合唱とオケとのバランスも今回は違和感がなかったというより、もう少し合唱を聴かせて欲しかったです。
って勝手なことばっかり言って、すみません。

   ◇  ◇  ◇

ワーグナー《さまよえるオランダ人》

指揮:トマーシュ・ネトピル
演出:マティアス・フォン・シュテークマン

オランダ人:エフゲニー・ニキティン
ゼンタ:ジェニファー・ウィルソン
エリック:トミスラフ・ムツェック
ダーラント:ディオゲネス・ランデス
マリー:竹本節子
舵手:望月哲也

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団

【関連エントリ】
ワーグナー《さまよえるオランダ人》@新国立劇場(2007年)

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11 January 2011

ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》@新国立劇場

Tristan_isolde2011年1月10日(月・祝)
新国立劇場 オペラ劇場

年明け最初の音楽会は、大野さんが指揮するワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》で始まりました♪
おめでたいとは言い難いストーリーのオペラですが、歌手もオケも演出も、とても良かったので、久しぶりに足を運んだ新国立劇場で、至福の時をすごすことができました。

なんと言っても、大野さんの指揮が素晴らしかったです。
繊細なピアニッシモ♪ そして底から湧きあがるようなフォルティッシモ♪ 情感豊かな音楽を聴かせてくれました。
大野さん、中堅を脱して、もうすっかり巨匠の域に入ったようですね。

トリスタンを歌ったステファン・グールドさんの若々しい声にも聴き惚れました。伸びのある美しい歌声は主人公としての存在感抜群でした。
イゾルデのイレーネ・テオリンさんは先シーズンのリングでも聴かせてくれましたが、今回も安定した歌を披露してくださり、終始、安心して聴けました。

演出は奇を衒うことのない解りやすいもので、シンプルで洗練された舞台美術には好感が持てました。
色数を極力おさえたことで、かえって情感を際立たせることに成功していたし、第三幕終わりの赤い大きな月と赤いイゾルデのドレス、そして青い光の対比が、とても美しかったです。
また、水のはられた舞台は鏡面となり、あばら骨のような船の上のトリスタンとイゾルデの姿が映り込んで絵画的効果をあげたかと思えば、別の場面では兵士がパシャパシャと音を立てて駆け回ったりと、面白く使われていました。

客席は、ほぼ満員。
終演後の盛大な拍手とブラーヴォの嵐に応え、何度も何度もカーテンコールが繰り返されました。

   ◇  ◇  ◇

ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》

指揮:大野和士
演出:デイヴィッド・マクヴィカー

トリスタン:ステファン・グールド
マルケ王:ギド・イェンティンス
イゾルデ:イレーネ・テオリン
クルヴェナール:ユッカ・ラジライネン
メロート:星野 淳
ブランゲーネ:エレナ・ツィトコーワ
牧童:望月哲也
舵取り:成田博之
若い船乗りの声:吉田浩之

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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23 March 2010

ワーグナー《神々の黄昏》@新国立劇場

2010年3月21日(日)
新国立劇場 オペラ劇場

春の嵐の吹き荒れた休日の午後、《神々の黄昏》を観てきました♪

東フィルの演奏もエッティンガーさんの曲づくりも意欲的で面白かったし、前作《ジークフリート》に引き続いて出演したジークフリート役のクリスティアン・フランツさんと、ブリュンヒルデを歌ったイレーネ・テオリンさんは、特に素晴らしかったです。

ジークフリートが余りにあっけなく殺されてしまったのには納得できなかったけど、舞台真中の一筋の光の道を這い上がってゆく場面で思わず涙がこぼれてしまったのは、やっぱり音楽と演出の相乗効果かな?

舞台装置には、前三作品のような大仕掛けや目新しさはなかったものの、造形的にはとても美しかったし、衣装もシンプルだけれど、それぞれのキャラクターを上手く現していて、視覚的には、とても楽しかったです。
それにしても、《ワルキューレ》では、あんなに巨大だったグラーネ木馬も最後はあんなに小さくなっちゃって・・・
そんなところにも、ちゃんと意味が込められていたのだなと、最後の最後まで演出の巧みさに感心させられました。

あ~あ、これで、とうとうトーキョーリングも終わってしまうのですね。今は、2年越しで長大な作品を聴き終えた達成感と満足感で一杯です。
ワーグナーに対して長いこと苦手意識を抱いていた私が《ニーベルングの指環》を全部観ることになるなんて、数年前には想像もできないことでしたから。

   ◇  ◇  ◇

ワーグナー《神々の黄昏》
(楽劇《ニーベルングの指環》第3日)

指揮:ダン・エッティンガー

【初演スタッフ】
演出:キース・ウォーナー
装置・衣裳:デヴィッド・フィールディング
照明:ヴォルフガング・ゲッベル

ジークフリート:クリスティアン・フランツ
ブリュンヒルデ:イレーネ・テオリン
アルベリヒ:島村武男
グンター:アレクサンダー・マルコ=ブルメスター
ハーゲン:ダニエル・スメギ
グートルーネ:横山恵子
ヴァルトラウテ:カティア・リッティング
ヴォークリンデ:平井香織
ヴェルグンデ:池田香織
フロスヒルデ:大林智子
第一のノルン:竹本節子
第二のノルン:清水華澄
第三のノルン:緑川まり

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

【関連エントリ】
ワーグナー《ラインの黄金》@新国立劇場
ワーグナー《ワルキューレ》&バックステージツアー@新国立劇場
ワーグナー《ジークフリート》@新国立劇場

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15 February 2010

ワーグナー《ジークフリート》@新国立劇場

2010年2月14日(日)
新国立劇場 オペラ劇場

エッティンガー&東フィルの《ジークフリート》を聴いてきました♪

トーキョーリング初演時の2003年4月にも、なぜか気まぐれで《ジークフリート》だけは観ていたので、このプロダクションに接するのは今回が2回目。

初めて単独で観た時も、その斬新でポップな演出や舞台美術には惹かれるものがあり、すごくワクワクしたのだけど、物語や音楽の面白さを心から楽しめたかといえば、う〜む、まずまずだったかなと言うのが正直なところでした。

ところが今回は・・・
やっぱりリングって、続けて観ると楽しさが倍増するのですね♪
(あたり前でしょ!今頃わかったの?なんて言わないで〜)

もしかすると、昨年の夏休み、姪っ子と一緒にこどものためのオペラ劇場《ジークフリートの冒険》を観たせいもあるのかもしれないけど、今回は物語の流れや登場人物のキャラクターの理解も深まったし、ライトモチーフもバッチリ聴こえたし、演出的にも前二作と繋がる仕掛けが幾つもちりばめられていたことも解ったし、とても面白かったです。

前回は、電子レンジやミキサーを使って鍛え直したノートゥングや、ふわふわ空中遊泳する小鳥さんばかりが強く印象に残り、ほとんど記憶になかった第三幕の良さに気づいたのも、昨年の《ラインの黄金》や《ワルキューレ》と、つづけて鑑賞することが出来たからかもしれないなと感じました。
それにしたって、目覚めたブリュンヒルデとジークフリートの織りなすシルエットの美しかったこと〜

そうそう、エッティンガー&東フィルの演奏も良かったし(コンサートマスターは三浦章広さん)、歌手もみなさん熱演されていて、私は満足できました。
来月の《神々の黄昏》も楽しみ♪

   ◇  ◇  ◇

ワーグナー《ジークフリート》
(楽劇《ニーベルングの指環》第2日)

指揮:ダン・エッティンガー

【初演スタッフ】
演出:キース・ウォーナー
装置・衣裳:デヴィッド・フィールディング
照明:ヴォルフガング・ゲッベル
振付:クレア・グラスキン

ジークフリート:クリスティアン・フランツ
ミーメ:ヴォルフガング・シュミット
さすらい人:ユッカ・ラジライネン
アルベリヒ:ユルゲン・リン
ファフナー:妻屋秀和
エルダ:シモーネ・シュレーダー
ブリュンヒルデ:イレーネ・テオリン
森の小鳥:安井陽子
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

【関連エントリ】
ワーグナー《ラインの黄金》@新国立劇場
ワーグナー《ワルキューレ》&バックステージツアー@新国立劇場
ワーグナー《神々の黄昏》@新国立劇場

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19 November 2009

アルバン・ベルク《ヴォツェック》@新国立劇場

Wozzeck2009年11月18日(水)
新国立劇場 オペラ劇場

とても楽しみにしていた《ヴォツェック》を観てきました。

舞台全面に張られた水。
その水面に映りこむモノトーンのキューブ。
ぽたぽたと落ちる雨だれの音。
ゆらゆらと光る波紋。

とても悲しいお話なのだけど、とても美しい舞台でした。
そして、何よりもベルクの音楽が素晴らしかった。

部屋の隅の小さな磔刑図。
マリーの子によって、その磔刑図に打ちつけられた人形。
背後で繰り広げられる群集たちの様々なマイム。
一度観ただけでは、その演出全体を把握するのは、ちょっと無理のようです。時間が許せば、もう一度、観たいくらい。

若杉さんに代わって指揮台に立ったハルトムート・ヘンヒェンさんと東フィルも良かったし、歌もヴォツェックのトーマス・ヨハネス・マイヤーさんをはじめ、みなさん、役柄に良くあった素晴らしい歌を聴かせてくれました。
そして、この舞台では、マリーの子が、とても重要な役割を果たしていました。
彼が壁に残した落書き"PAPA"の文字が忘れられません。

   ◇  ◇  ◇

アルバン・ベルク《ヴォツェック》

指揮:ハルトムート・ヘンヒェン
演出:アンドレアス・クリーゲンブルク

ヴォツェック:トーマス・ヨハネス・マイヤー
鼓手長:エンドリック・ヴォトリッヒ
アンドレス:高野二郎
大尉:フォルカー・フォーゲル
医者:妻屋秀和
第一の徒弟職人:大澤 建
第二の徒弟職人:星野 淳
マリー:ウルズラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイネン
マルグレート:山下牧子

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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06 October 2009

アルバン・ベルク《ルル》@びわ湖ホール

Biwakohall012009年10月4日(日)
滋賀県立芸術劇場 ぴわ湖ホール 大ホール

アルバン・ベルク《ルル》
ツェルハ補筆による3幕完成版

指揮:沼尻竜典
演出/装置:佐藤信

ルル:飯田みち代
ゲシュヴィッツ伯爵令嬢:小山由美
アルヴァ:高橋淳
劇場の衣裳係/ギムナジウムの学生/ボーイ:加納悦子
医事顧問官/銀行家/教授:片桐直樹
画家/黒人:経種廉彦
シェーン博士/切り裂きジャック:高橋祐樹

管弦楽:大阪センチュリー交響楽団

   ◇  ◇  ◇

Biwakohall02アルバン・ベルクの《ルル》は音楽的にも演劇的にも大変難しい作品だそうで、上演される機会も少なく、私も初めて観たのは、2003年11月に日生劇場で日本初演された時。(ルルを歌ったのは天羽明惠さん)次は、2005年2月に新国立劇場での2幕版。(ルルは佐藤しのぶさん)そして、今回が3回目。

まずは、飯田みち代さん演じるルルが、とても良かったです。
歌唱は勿論のこと、純真可憐かつ自然体で、男たちを次々と破滅に追い込んでゆくファム・ファタールを見事に演じていて、私がこれまで抱いていたルル像とは少し違う感じでしたが、「うんうん、こういうルルもありかもね。」と、しっかり納得させられました。

ゲシュヴィッツ伯爵令嬢の小山由美さんは、役柄を、すっかり自分のものにされていて、余裕すら感じられ、安心して聴けました。しかも小山さんの男装の令嬢はビジュアル的にもカッコイイ!(^^)

シェーン博士の高橋祐樹さん、アルヴァの高橋淳さん、画家の経種廉彦さんら男声陣も、とても素晴らしく、オーケストラも良い意味で緊張感の保たれた密度の濃い演奏でした。
(これからも、大阪センチュリー交響楽団を応援しなくちゃ♪)

舞台美術は、正直、私の好みではなくて(^^;;; 「あっ!キレイ!」とハッとさせられたのは、唯一ルルが身体に貼りつくような薄いドレスの上に色鮮やかな着物を羽織ったところ位かな? それから、沼尻さんの指揮姿が映しだされた複数のモニターや舞台上のオケの意味が私には良く解らなかった。(^^;;;
でも、限られた道具を色々に見立たり、平面ではなく地下に部屋を配したアイディアは面白かったです。

   ◇  ◇  ◇

Biwakohall03そんな訳で、1998年にオープンした当初から「素晴らしい劇場!」とオペラファンの間で絶賛されていた(なのに一時は休館危機に追い込まれたそう)憧れの「びわ湖ホール」初体験は、とても楽しいものとなりました♪

それにしても、何と贅沢なロケーションの劇場なんでしょう!
第一幕が終わり薄暗い場内からロビーに出ると、そこには青々と広がる雄大な琵琶湖。

簡単に建物の外に出て湖畔を散歩することもでき、パチパチ写真を撮っていたら、毎日、ホール周辺に犬の散歩に来ているという地元の方に「今日は何をやっているのですか?」と声をかけられ、「ルルっていうオペラです。滅多に上演されない珍しい作品なので東京から来ました。」と答えたら驚かれてしまいました。(^^;;;

劇場の運営は色々な面で大変だし、県民の方々にとっては負担かもしれないけれど、これからも良い形で維持していってもらえたら、一音楽ファンとしては、とても嬉しいです。
機会をつくって、また観に行きます♪

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27 August 2009

サントリーサマーフェスティバル2009 オペラ《班女》

2009年8月26日(水)
サントリーホール ブルーローズ
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細川俊夫:オペラ《班女》
三島由紀夫作/ドナルド・キーン翻訳 近代能楽集「班女」による

花子:半田美和子(ソプラノ)
実子:フレドリカ・ブリレンブルク(メゾソプラノ)
吉雄:小森輝彦(バリトン)

指揮:ヨハネス・デビュス
東京シンフォニエッタ

   ◇  ◇  ◇

昨夜、オペラ《班女》を観てきました♪
とても素晴らしい舞台でした!

2004年にフランスのエクサン・プロヴァンス音楽祭で大野和士さんの指揮によって初演され、その後、ベルギー、ポルトガル、ドイツなどで上演され高い評価を得た作品が、今回、初めて日本で上演されるとあれば観に行かずにはいられません。(^^;

世阿弥の作とされる能《班女》をもとに三島由紀夫が書き上げた戯曲《班女》をドナルド・キーンさんが英訳したものをオペラ化したのだそうで、会場となったサントリーホール・ブルーローズ(小ホール)も、能舞台を思わせる本舞台と橋掛り、そして正面、中正面、脇正面の座席と、そこはまるでモダンな能楽堂のようでした。

作曲をされた細川俊夫さんご自身による解説があった後、いよいよ開演♪
出演者は3人ともシンプルな黒い装いで、花子と吉雄の持つ大振りな赤と白の扇が印象的でした。
英語による歌唱は、とても聞き取り易く、歌の間に挟み込まれた花子の日本語での台詞は逆に音として聴くと面白いなと感じました。

橋掛りを歩く花子の動作や扇を扱う場面で、ところどころ仕舞の所作を感じる部分もありましたが、音楽から謡や囃子を感じさせることはなく、とても新鮮に聴くことができました。

特にソプラノの半田美和子さん演じる狂女は凄かったです。
実子役のブリレンブルクさんは初演からずっとこの役を歌っているそうで、表情と良い、声の変化のさせ方と良い、すっかり役にはまっていました。
バリトンの小森さんも吉雄という、どうしようもない男のキャラクターを上手く演じていたように思いました。

現代の東京を舞台にした《班女》、登場人物それぞれに思いを寄せてみれば、何となく理解できるような出来ないような・・・
う~ん難しい。(^^;;;
いずれにしても、また時間を経て、このオペラをもう一度観てみたいと思いました。

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26 June 2009

チョン・ミョンフン&東フィル@東京オペラシティ

2009年6月25日(木)
東京オペラシティ・コンサートホール

ヴェルディ《椿姫》より(コンサートスタイル・オペラ)

指揮:チョン・ミョンフン
ヴィオレッタ:マリア・ルイジア・ボルシ
アルフレード:ダニール・シュトーダ
ジェルモン:ヴァシリー・ゲレッロ
フローラ:渡辺玲美
合唱:新国立劇場合唱団
東京フィルハーモニー交響楽団

   ◇  ◇  ◇

念願だったチョン・ミョンフンのオペラを初体験♪
すごく良かった~♪
時間が許せば、サントリーかオーチャードでもう一度聴きたいくらい!

とにかく東フィルが素晴らしかった♪
弦の響きの何と美しいこと。
第3幕の前奏曲なんて、もうたまりませんでした。
4月にレスピーギで爆音を放っていた同じオケとは到底思えないです。(^^;;;
指揮者で、こんなにも変わるものなのですね。
さすがチョン・ミョンフン!やっぱりスゴイ!カッコイイ♪

そうそう!合唱がこれまた上手いんだなぁ。
きっと、東フィルにとっても新国立劇場合唱団にとっても《椿姫》は、お手のものなのでしょうね。(^^)

ヴィオレッタ役のボルシさんは、まろやかな中低音と透明感のある強い響きの高音を備えていて、曲が進むにつれて、どんどんと調子を上げていきました。
第3幕では、それまでのワインレッドのタフタのドレスから、チャコールグレーのシンプルなドレスに着替えて登場。
ステキなヴィオレッタでした。(^^)

ジェルモン役のゲレッロさんの余裕のある歌にも安心して耳を傾けられたし、アルフレード役のシュトーダさんも役に合った若々しさのある歌でした。

久しぶりにコンサートスタイルのオペラを聴いたけど、演出にあれこれ目を惑わされることなく音楽に集中できるし、指揮者やオケの演奏の様子が良く解って、思いのほか楽しかったです。(^^)
チョンさまの譜面台には一応スコアが乗っていたけど最初のページが開かれたままで一度も見ることはなかったのも解っちゃいました。もう全部頭に入っているのですね。うううむ、スゴイ。

すっかりソリストに任せて棒をおろしているチョンさま、ヴィオレッタの思いを代弁するかのように感情移入するチョンさま、自らソリストに拍手をおくってしまうチョンさま、そんな指揮姿を見られただけでも満足でした。

終演後の客席は、スタンディング・オベーションも見られるほどの熱い拍手で一杯に。
私は誰よりもマエストロ・チョンに拍手を贈りたかったのに、なかなか登場してくれな~い。
歓声に応えるソリスト達の後ろ側を隠れるように、やっと現れたかと思ったら、コンサート・マスターやオケの首席奏者を讃えるばかりで、とうとう自ら最前列に出ることはありませんでした。
マエストロのそんな姿も本当にステキ♪

ああ、兎に角、良い演奏を聴くと、元気が湧いてくる♪

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09 May 2009

ショスタコーヴィチ《ムツェンスク郡のマクベス夫人》@新国立劇場

2009年5月7日(木)
新国立劇場 オペラ劇場

幕が下り、カーテンコールになっても、拍手することが出来ませんでした。
せめて一人ぐらい何とかならなかったの?と思うほど、登場人物がイヤな感じの人間ばかりで、一人として共感もできなければ、一瞬の同情すら寄せることが出来なかったからでしょうか?

それくらい、悲惨で荒んだお話でした。

ただ、3時間に及ぶ長い作品だったにもかかわらず、それを全く感じさせないほど充実した音楽と舞台だったことは確かです。

ショスタコーヴィチの音楽は、とても解り易く、時に明るく美しく響いていました。
演出も、そこまでしなくてもいいのにと思うほど説明的でした。

だからなのか? 登場人物らのやっていることが、とても単純かつ短絡的に思え、ストーリーにも捻りがなく、何となく物足りなさを感じてしまいました。

もう少し抽象的な表現のほうが、私は好きかも?(^^;;;

   ◇  ◇  ◇

ショスタコーヴィチ《ムツェンスク郡のマクベス夫人》
台本:アレクサンデル・プレイス

指揮:ミハイル・シンケヴィチ
演出:リチャード・ジョーンズ

ボリス:ワレリー・アレクセイエフ
ジノーヴィー:内山 信吾
カテリーナ:ステファニー・フリーデ
セルゲイ:ヴィクトール・ルトシュク
アクシーニャ:出来田 三智子

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団

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