ベンジャミン・ブリテン《ピーター・グライムズ》@新国立劇場
新国立劇場、新シーズン幕開けの《ピーター・グライムズ》 とても素晴らしい公演でした♪
集団による誹謗、阻害、孤立、経済的貧しさ、虐待と、重く深刻なテーマを扱った作品ですが、美しい音楽と洗練された演出に魅了されました。
まず何と言っても、ブリテンの音楽がステキ♪
その表現方法の豊かさ巧みさに、どこからそんなに沢山のアイディアが浮かんでくるの?と感心させられました。ブリテンらしい音の重なりはハッとするほど美しく、第一幕第二場で歌われたピーターのアリアには思わずうっとり。
合唱、重唱もバランスよく配されていたし、たっぷりとオーケストラを聴くこともできるし、ホント贅沢な作品をブリテンは創ってくれました♪
演出も好みでした。集団の動きが効果的に使われ、限られた数色で構成された舞台美術も良かったです。
モノトーンの世界はイギリス東海岸の小さな漁村の陰鬱な雰囲気が感じられ、高い壁に挟まれた空間は閉塞感や疎外感を現わしているようでした。
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵画を思い起こさせる背景や傾いた壁とのバランスも絶妙で、シンプルな舞台装置なのに、そこから発せられるものは、とても大きなものでした。
タイトルロールのスチュアート・スケルトンさんは大きな身体で熱演。もちろん歌も良かったけれど終幕での錯乱し自殺へと追い詰められゆく場面の演技も素晴らしかったです。
それにしても、本当に重たいテーマの作品でした。今の私たちの身近にいくらでもありそうな問題がつまっていて身につまされる思いがしました。
せめてもの救いは孤独なピーターを、ずっと支えようとした理解者エレンの存在です。
しかし、そのエレンも、ピーターの死後、集団の中に身を置いたのには、ああ、やっぱりそうなんだ~と、あれこれ考えさせられました。
生きるって本当に大変・・・
◇ ◇ ◇
ベンジャミン・ブリテン《ピーター・グライムズ》
指揮:リチャード・アームストロング
演出:ウィリー・デッカー
ピーター・グライムズ:スチュアート・スケルトン
エレン・オーフォード:スーザン・グリットン
バルストロード船長:ジョナサン・サマーズ
アーンティ:キャサリン・ウィン=ロジャース
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【関連エントリ】
ザルツブルク音楽祭2005 ヴェルディ《椿姫》(2006.01.05)
B.A.ツィンマーマン《軍人たち》@新国立劇場(2008.05.08)