《住吉詣》@国立能楽堂
千駄ヶ谷の国立能楽堂で開かれた第33回のうのう能特別公演で源氏能のひとつ《住吉詣》を観ました。
仕舞も源氏づくし、狂言も舟での道行にちなんだという、なかなか凝った演目の公演でした。
《住吉詣》は、『源氏物語』「澪標」の巻の一場面を題材にした能で、原作では、偶然、同じ日に住吉大社を参詣した光源氏と明石の君(能では明石上)は顔を会わすことなく歌を交わして別れるのですが、能は、二人は再会し、盃を交わし、共に舞い、喜びあうという全く趣の違うものになっていました。
確かに、光源氏の一行と明石上や侍女ら大勢の登場人物で一杯になった舞台上で繰りひろげられる宴の場面は、それはそれは華やかで見応えあるものでした。
明石上の装束も眩いほど。
光源氏と明石上の舞も美しかった。
でも、何か物足りなさを感じたのも事実・・・
己の立場をわきまえ袖を濡らしながら住吉から離れていった明石の君。
そのことを後で知り、明石の君を思いやって歌をおくった光源氏。
ああ、やっぱり私は原作のほうが好き。
みをつくし恋ふるしるしにここまでも
めぐり逢いける縁(えに)は深しな
(光源氏)
数ならで難波(なには)のこともかひなきに
などみをつくし思ひそめけむ
(明石の君)
露けさの昔に似たる旅衣
田蓑の島の何は隠れず
(光源氏)
◇ ◇ ◇
解説:河添房江
仕舞《源氏供養》
観世喜之
仕舞《須磨源氏》
梅若玄祥
地謡:佐久間二郎、中所宜夫、観世喜正、古川充
狂言《舟渡聟》
舅:野村万作
聟:石田幸雄
嫁:高野和憲
能《住吉詣》
シテ(明石上):観世喜正
ツレ(光源氏):梅若紀長
ツレ(侍女):中所宜夫、遠藤和久
ツレ(従者):中森健之介、桑田貴志、小島英明
ツレ(惟光):遠藤喜久
子方(随身):馬野訓聡、遠藤瑤実
子方(童):奥川恒成
ワキ(住吉の神主):森常好
アイ(社人):深田博治
笛:藤田六郎兵衛
小鼓:大倉源次郎
大鼓:亀井広忠
後見:観世喜之、奥川恒治、山中迓晶
地謡:古川充、佐久間二郎、坂真太郎、川口晃平、馬野正基、梅若玄祥、山崎正道、鈴木啓吾