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28 July 2008

ろうそく能《葵上》@宝生能楽堂

Aoinoue
2008年7月25日(金)
宝生能楽堂

先日、若手能楽師のグループ「神遊(かみあそび)」による、ろうそく能を観てきました。

真っ暗闇になった会場に、蝋燭を手にした二人の若人が客席後ろから登場し、舞台の周りにあらかじめ設置されていた蝋燭へ「火入れ」されると、能舞台が浮かび上がり、ゆらゆらと炎のゆれる幻想的な雰囲気の中で物語は始まります。

さて、《葵上》については、改めて説明するまでもないですね。
私も、一応、よく知っているストーリーだったので、辛うじて何とかなったのですが、演者が何言ってるのか解らないところも多く(日本語なのに、我ながら情けないっ)言葉を聞き取ることは早々に放棄し、音楽と舞と装束を中心に楽しみました。

ところで、このお能、葵上がタイトルロールのはずなのですが・・・
なんと、病に伏せる葵上は舞台上に置かれた一枚の小袖によって現わされるのみなのです。
う〜ん、なんてシンプルなのでしょ!
それだけ能の舞台って観客の想像力に委ねているってことなのでしょうか。

それにしても、鬼女に変身した六条御息所は、とっても怖かったです。
でも、蝋燭の光に照らされた般若の面は陰影に富み、ウロコ模様の装束と、裾を長く引きずった緋色の袴は、格別の美しさでした。

鬼女と化した六条御息所と、その霊を鎮めようとする小聖。
そして、どんどんと盛り上がる地謡と囃子。
その迫力に圧倒され、六条御息所の所作に目を凝らしていると、あっと言う間に終わってしまった舞台。
すると、まるで何ごともなかったかように、静かに舞台から下がって行く演者たち。
観客も、それに対し盛大な拍手をするわけでもなく、同じく静かに見守っているだけ。
(最後の最後、一部の観客から少し拍手が起こりましたが)
もちろんカーテンコールなんて、一切ありません。

ああ、こんなのも良いなぁって思いながら、私も静かに能楽堂を後にしたのでした。

ところで、蛇足ですが、さっきドナルド・キーンさんの著書『能・文楽・歌舞伎』を読んでいて知ったのが、能舞台の背景(鏡板)に描かれている大きな松って、奈良の春日大社にある「影向の松」を模しているということ。
へぇ、そうなんだ!という訳で、春日大社にも行ってみたくなりました。

   ◇  ◇  ◇

能楽囃子《源氏物語組曲》
笛:一噌隆之
小鼓:観世新九郎
大鼓:柿原弘和
太鼓:観世元伯

狂言 《狐塚》
シテ(太郎冠者):高澤祐介
アド(主人):三宅右矩
小アド(次郎冠者):三宅近成
後見:前田晃一

能 《葵上》
シテ(六条御息所の生霊/鬼女): 観世喜正
ツレ(巫女・照日の前):古川 充
ワキ(横川小聖):宝生欣哉
ワキツレ(朱雀院の臣下):大日方寛
アイ(臣下の従者):高澤祐介

笛:一噌隆之
小鼓:観世新九郎
大鼓:柿原弘和
太鼓:観世元伯

後見:奥川恒治、山中が晶
地謡:浅見重好、上田公威、遠藤喜久、鈴木啓吾、小島英明、桑田貴志

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Comments

むちゅさん、そうなんです! ろうそく能なかなかステキでしたよ。(^^)

実は・・・
谷崎の『陰翳礼讃』は、須賀さんの著書にも度々登場するのに、いまだ未読。
読まなきゃ!
夏休みの宿題がまた増えた~(^^;;;

Posted by: snow_drop | 06 August 2008 at 12:57

わ~、これは素敵ですね!
谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』の世界を想像してしまいます。

Posted by: むちゅ | 05 August 2008 at 23:37

sandazさん、こちらこそ、はじめまして。
コメントいただき、どうもありがとうございます。

歌舞伎も華やかでステキですよね。(^^)
東銀座の歌舞伎座でご覧になられたのですか? 今月は玉三郎さんと海老蔵さんが出てらしたのですね。
私は、随分前に、一幕見で玉三郎さんの《天守物語》を見たきりです。(^^;

歌舞伎と能って、結構、同じ主題を扱っているそうですね。(歌舞伎に詳しい友人から教えてもらいました。(^^;)
それらを見比べるのも楽しそうですよね。

それから、私のブログに過分なお言葉をいただき、どうもありがとうございます。
わぁぁ、お恥ずかしい限りです。(^^;;;

いつもこんな調子なので、どうぞ、また気軽にコメントしてくださいね。

Posted by: snow_drop | 30 July 2008 at 13:26

はじめまして。
コメント送るのとてもドキドキしています。
いつも楽しく拝読しております。
今回のお能、是非とも行ってみたかったです...
この日は歌舞伎に、やっと取れたのが25日だったのです。
本題からは少しそれますが、素敵な文章と写真、内容いつもうっとりしてます!

Posted by: sandaz | 30 July 2008 at 00:10

にけさん、こんにちは。

サントリーホールでも能を上演するのですか?! ちょっと意外。(^^;
能や狂言そのものだけでなく、能楽堂の雰囲気もとてもステキなので、次回は是非、本物の能楽堂で鑑賞してみてください。

《葵上》は40分位の上演で、アッと言う間でしたよ。
私も、まだオペラの50分の1程しか能は観たことがないのに耐えられたのだから、にけさんも大丈夫ですよ!

そうそう!キーンさんと言えば、相当のオペラ愛好家でらっしゃいますよね。(^^)
それに、日本文学を始めたきっかけは『源氏物語』なのだそうですね。(^^)

実は私、先日、中村紘子さんのピアノリサイタルの客席で、生キーンさんをお見かけしたのがきっかけで、また急にキーンさんの著書にあたりはじめたところだったのです。(^^)

春日大社では、舞楽(雅楽)や能の上演が行われているのですね。チャンスがあったら、私も体験してみたいです。

Posted by: snow_drop | 29 July 2008 at 13:37

nakaさんも、ぜひ一度、試しに能楽堂へ足を運んでくださいませ~(^^)

私自身が超初心者なので、お薦めの演目など全く解らないのですが、前述のキーンさん曰く、芸術的感性のある人なら、能楽堂へ足を踏み入れただけで、そこに感じるものがあるとおっしゃられてますし(私も同感)、ビギナー向けの解説付き上演(矢来能楽堂の「のうのう能」など)もあるので、気楽に観てみると良いかもしれませんよ。

そうなんです。春日大社の「一ノ鳥居」は何度も観たのですが(^^;本殿には行かなかったのです。(^^;;;
次回、ぜひ訪ねてみます。

Posted by: snow_drop | 29 July 2008 at 13:10

 こんばんは。残念ながら能には縁がなくて、1度だけサントリーホールで見ました。能のこと取り上げてください。

 源氏物語愛好家(あやしい?)としては、葵上(あおいのうえでしたっけ?)のような演目はぜひ見てみたい。しかし長時間耐えられるか心配。

 ドナルド・キーンのオペラの本は昔から愛読しています。「私と源氏物語」(だと、思う)という1時間の講演のカセットテープも何度も聞いていて、とても身近な人です。

 春日大社も、あの暑いときに1度行ったきりです。別の時期に、神苑でおこなわれる雅楽演奏会には行きましたけど。

Posted by: にけ | 28 July 2008 at 23:25

面白そうですね(^^
能は見たことが無く歌舞伎ぐらいですが、お話を拝聴しているとシンプルな中に美がありそうです。知識がなくても楽しめるかな・・・(^^;

先日の奈良旅行では、春日大社には行かれなかったんですね。個人的には東大寺などの方が好みですが、林の中にある春日大社は建物だけでなく、その周りも一緒に味わうべきものかもしれません。

Posted by: naka | 28 July 2008 at 22:15

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