《隅田川》@矢来能楽堂
2008年4月25日(金)
矢来能楽堂
先日、神楽坂にある矢来能楽堂で能《隅田川》を観てきました。
《隅田川》は世阿弥の長男 観世十郎元雅(1394?~1432)の作品で、ベンジャミン・ブリテンが1956年に来日した時に鑑賞し、とても強く感動して、後にオペラ《カーリュー・リヴァー》(1964年)を創ったことでも良く知られている能です。
数年前、その《カーリュー・リヴァー》の公演を観る機会があり、元となった能《隅田川》も、是非、観てみたいなと思っていたので、今回やっと、その願いが叶いました。
《隅田川》の物語は、人買いにさらわれた幼き我が子(梅若丸)を探しに京から旅をしてきた母親が、隅田川を渡る舟の上で耳にした話から既に梅若丸は死んで隅田川のほとりの塚に葬られていることを知り、その塚を掘り起こそうとする母の前に梅若丸の霊が現れるという、とてもとても悲しいものです。
その筋書きばかりでなく、母親の狂わんばかりの悲しみが舞いと最小限の所作で表現される能の美しさに、私も深く感動しました。
ところで私、お能は10年くらい前に千駄ヶ谷の国立能楽堂(とても立派)に通って何度か観ているのですが、ちょっと、いえ、かなり敷居が高くて、すっかり足が遠のいていたのでした。(^^;
しかし、今回、縁あって出かけた矢来能楽堂の「のうのう能」は、上演前に物語や見所の解説をしてくださり、お客さんも一緒に謡の一節を歌ったり、普段はみられない能装束の着付けまで舞台上で見せてくれたりと、とても解りやすく興味深い趣向が凝らされていました。
そして、矢来能楽堂は観世喜之さんが所有されている昭和27年に再建された木造の建物で(敷地内に観世喜之さんのお宅もありました。)、普段は閉ざされている門が公演のある日には開かれ、しばらく続く小道の先の灯りのともった能楽堂の入り口で舞台関係者が丁寧に温かく迎え入れてくれる雰囲気が、これまた素晴らしく、舞台が始まる前から気分が高揚しました。
客席が300席と小ぢんまりとしているところも良かったです。
これをきっかけに、ぜひまた気軽に、お能にも足を運んでみたいと思いました。
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観世十郎元雅:能《隅田川》
シテ(梅若丸の母):観世貴正
子方(梅若丸の霊):遠藤瑤実
ワキ(隅田川の渡し守):館田善博
ワキツレ(旅の者):森常太郎
笛:小野寺竜一
小鼓:後藤嘉津幸
大鼓: 安福光雄
後見:長沼範夫、遠藤和久
地謡:味方玄、古川充、佐久間二郎、坂真太郎