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03 October 2007

須賀敦子さんと夙川

Syukugawa須賀さんの著書の中に、よく"夙川"という地名が登場します。

"しゅくがわ"

私にとって耳慣れない名前の町は、関西地方のどこかにあるに違いなさそうだけれど一体どの辺りにあるのか皆目見当もつかなければ、具体的に調べて確かめてみる熱心さもなく、ずっと長いこと、そのままになっていました。

うすぼんやり解っていたのは、須賀さんが父親の転勤にともなって東京の麻布へ移る前の幼少時代の数年間と、戦争中、疎開で戻っていた十代の頃の数年間を過ごした実家があるということだけ。

その"夙川"が、実は町の名前ではなく六甲山から西宮市を通って大阪湾に注ぎこむ川の名前であり、その川べりにある阪急神戸線の駅名の一つだということが解ったのは、神戸・大阪を旅行すると決め、何とはなしに地図を眺めていた時でした。

確か、須賀さんの実家は夙川駅を中心に広がるお屋敷町の一つ西宮市殿山町だったはず。
その実家を"西宮"の家とか"殿山町"の家とは呼ばずに"夙川"の家と、しばしば表現したのは、この辺りに住む人々にとって共通のものなのか、それとも須賀さんやその家族など身近な人々だけに通じるものだったのか、土地に不案内な私には、よく解らないことなのだけれど、川や駅の周辺に"夙川"と冠した学校や教会や公園があることから想像できたのは、"夙川"とは、川そのものだけでなく、その辺り一帯を指すこともありそうだということでした。

そして、何だか急に、主目的だった神戸と大阪を差し置いてでも"夙川"を訪ねてみたくて居ても立ってもいられなくなったのでした。

三宮から阪急電車にゆられること十数分、芦屋川の駅を出ると次はいよいよ夙川駅です。
そろそろ車窓から須賀さんも通っていたカトリック夙川教会の尖塔が見えるはず。
見逃してなるものかぁ〜!
あっ! あれだ!
線路際まで迫った家々やマンションの合い間に、一瞬だったけれど鋭く尖がった塔が見えた時、何を期待している訳でもないのに私の胸はドキドキと高鳴ったのでした。

Syukugawa02夙川の駅は、住宅街に位置する私鉄の駅らしい、こぢんまりと落ち着いた雰囲気でした。
ホームから夙川の流れを見ることもでき、その川岸を覆う緑豊かな並木は桜のようです。
花の季節はキレイなんだろうなぁ〜

おっ!? 駅構内に「成城石井」がある。東京のスーパーマーケットがこんなとこまで進出しちゃって〜
あ、そんなことは、どうでもいいですね。

さて、さっそく駅から町へ出て、まずは車窓から尖塔を見たカトリック夙川教会へ向かってみました。

この日も関西はメチャクチャ暑く、ふうふう言いながら見当をつけた方向に歩いて行くこと数分、突然、明るいバラ色のとても美しい教会が真っ青な空の下にすっくと現れました。

外観を見られれば、もうそれで充分と思って訪ねたのですが、よく見ると聖堂の扉が大きく開け放してあります。
旅行中訪ねた他の教会の殆どが扉を固く閉ざしていたのとは何だか対照的。思わず嬉しくなって、誰もいないシンと静まった聖堂の中へも入らせていただきました。

《十字架の道行》がステンドグラスの窓と窓の間の壁に飾られていたので、リストの《十字架の道行》を思い出しながら拝見し、お祈りにいらした方の邪魔をしないように、少しだけ写真も撮らせていただきました。

●フォト・アルバム カトリック夙川教会(西宮市)

聖堂の中で、しばらく静かな時間をすごした後、街並みを見るため少し回り道をしながら駅へ戻り、駅前のバスターミナルから阪急バスに乗って次の目的地へ向かいました。

バスは駅を出て10分くらい住宅街を走った後、樹々の茂るカーブの多い山道を更に10分ほど登ったでしょうか?
私は、たった一人、山の中のバス停に降りたちました。
目指すは「甲山墓園カトリック墓地」です。

そうなんです。
せっかく夙川まで来たんだもの。
どうしても須賀さんのお墓参りがしたかったのです。

広大な墓地の中、何のめやすもなく彷徨う訳にはいかないだろうと管理事務所に立ち寄り、管理人さんから丁寧に場所を教えていただいたお陰で、すぐに須賀さんのお墓を見つけることができました。

大きな空に抱かれた緩やかな山腹にある広々とした墓地からは、なだらかに広がる周囲の山が臨め、お父さまの豊治郎さん、お母さまの万寿さん、弟の新さんとともに眠っている須賀さんも景色を楽しんでらっしゃるのではないかなと思いました。

墓石には「アンナ・マリア 須賀敦子」と洗礼名が刻まれていました。

もし、また私に、お墓参りできるチャンスがやって来たら、春なら紫色のヒヤシンスを、秋だったら紫苑の花を墓前にたむけたいな。

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Comments

ぼびぃさん、こちらこそ、はじめまして。

夙川教会についてのコメントをいただき、どうもありがとうございます。
そうだったのですか、そういういきさつがあったのですね。
聖テレジア大聖堂という名も納得できました。

また、阪神淡路大震災では、大きな被害を受けたそうですが、現在は修復され私のような一旅行者でも訪ねることができたのは、信者さんたちのお力によって守ってくださったおかげと感謝します。

阪神間を旅することがありましたら、ぜひ、また夙川教会を訪問させていただき、改めて聖女テレジア像をゆっくりと拝見させていただきたいです。

それから、折角いただいた大切なコメントなので、夙川関連のエントリのほうへ、このコメントと一緒に移させていただきたく、よろしくお願いいたします。
Posted by: snow_drop | 23 December 2007 at 21:32


snow_drop さん はじめまして。

甲山墓地を調べていて、こちらに参りました。
スレ違いで失礼なのですが、コメント置いておきますね。

芦屋で生まれて、成城で育って、また芦屋に住んでます。
snow_drop さんの行かれた、夙川教会で幼児洗礼を受けて、
小さい時から毎週日曜日にミサで通ってます。

御覧になったかどうか分りませんが、現在の正面中央は
写真の通り十字架なのですけど、昔は、現在、入って直ぐ
左に置かれてる“聖テレジア”が正面にあり、左右の木製の
聖堂ミニチュアの上には同じ様式のイエズス像とマリア像がありました。

テレジア像は「各聖堂の正面は十字架に!」というお達しが
教会にあったらしく移動されました。イエズス像とマリア像は
地震の時に倒れてしまい、木っ端微塵だったそうです・・・

もし、次回に行かれる時があったら、テレジア像も御覧下さい。
夙川教会のシンボルですから。

では、失礼致します
Posted by: ぼびぃ | 21 December 2007 at 18:19

Posted by: snow_drop | 23 December 2007 at 21:40

snow dropさん、はじめまして。

同じハンドルネームなのですね。(^^) 最初、あれ?って驚いてしまいましたが、こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。(^^)

ミッシェルバッハのお花のクッキーって、白くお砂糖のかかった"クッキーローゼ"ですよね?! 今回はお店巡りをする時間がなかったのですが、実はチェックしてました。(^^; 
ブログに書き出したら際限がなくなりそうなので触れてませんでが、実は甘いものが大好きなんです。
夙川、芦屋、神戸には、美味しいお菓子屋さんやパン屋さんが一杯あって、もうたまりません。(^^)

snow dropさんは、良く夙川へ行かれるのですね。お話を、また聞かせてくださいね。

Posted by: snow_drop | 13 October 2007 at 08:28

はじめまして!
たまたま同じニックネームでしたので、ちょっとお寄りしましたら・・・素敵なダイアリーに読み進んでしまいました!

今年、夫が阪神方面に転勤になったため、阪神間が身近になりました。単身赴任中なので時々そちらに行きます。夙川のミッシェルバッハのお花のクッキーやエルベランのレモンパイを買いに行きます。

阪急電車をよく利用しますが、あの車体の色がなかなかいい感じだなと・・・。3線も平行して走っているので、便利ですね。

Posted by: snow drop | 12 October 2007 at 23:17

わ〜い!
生粋の夙川っ子Bowlesさんの登場をお待ちしておりました。(^^)

なるほど。"夙川"は、やはり「土地の名」なのですね。(^^;
しかも、本来はほんの限られた地域をさす名だったのですね。
それって須賀さん言うところの「風がちがう」ところ、なのかな?

そういえば、甲山からの帰りに乗ったタクシーの運転手さんが、夙川は、とても人気の高い憧れの住宅地なんですよとおっしゃってました。
ステキな街ですものね〜
その人気にあやかって、不動産業者がイメージ戦略で、今後もどんどんと夙川を拡大させちゃうかもしれませんね。(^^;

あの「成城石井」は、とても便利そうですね。
もし私が夙川の住人だったら、駅を使うたびに寄り道して、甘いものやら食材やらあれこれ買い物してしまいそうです。(^^)

Posted by: snow_drop | 05 October 2007 at 01:19

酒徒善人さん、こんばんは。

短い滞在だったのですが、神戸大阪間を往復したり阪神間の街を訪ねたりしたので、私も、阪急線、JR線、阪神線に乗りましたよ〜

同じJRでも西日本と東日本とでは車内のデザインがかなり違うし、阪急や阪神の車両はレトロチックな雰囲気がステキで、楽しみながらの移動ができました。(^^)

なるほど〜3つの鉄道の沿線に、すこしづつ違った文化があるのですね。何となくではありますが、車中からも雰囲気の違いを感じました。
次回は、途中下車して、また、じっくりと街を散策してみたいです。(^^)

Posted by: snow_drop | 05 October 2007 at 00:50

夙川生まれの夙川育ちがお答えします(笑)。

>川そのものだけでなく、その辺り一帯を指すこともありそうだということでした。

「夙川」というのは、あのあたり一体の「土地の名」です。大正年間に住宅地として開発された一帯、阪急の線路の南北、ほんのわずかの地域をそう呼びます。といっても、現在ではひどく拡大解釈されていますが。あそこに住んでいると、あまり「川の名」だということは意識したことがないですね。

「成城石井」、あれは今年できました。神戸の帰りに南側までまわらなくても牛乳が買える、と母が喜んでいます。

写真、あとでゆっくり拝見させていただきますね。

Posted by: Bowles | 04 October 2007 at 10:44

阪神間には3本のレールが平行して走っています。
山側を阪急電車、海辺を阪神電車、そしてその間をJR。
それぞれに文化が少しずつ違うといわれます。
今度、阪神間を旅されるときは、その違いを楽しまれてはどうでしょうか。

Posted by: 酒徒善人 | 03 October 2007 at 21:42

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