神戸市立小磯記念美術館
神戸滞在中、神戸港に浮かぶ六甲アイランド内にある神戸市立小磯記念美術館にも立ち寄ってみました。
(余談ですが、この時、乗った六甲ライナー。 車窓から海を眺めていると、突然、目の前が真っ白に! 沿線に建つ集合住宅のプライバシーを守るため、一定区間、窓ガラスが白く曇る仕組みになっているんですね。それにしても、ビックリしました)
神戸出身の洋画家 小磯良平(1903~1988)の遺族から神戸市へ寄贈された2000点に及ぶ作品、蔵書、資料、アトリエを保存し展示する目的で作られた美術館は、ほどよい規模のシックな佇まいで、緑いっぱいの中庭には、かつて住吉山手にあった自宅&アトリエのアトリエ部分が移築されていました。
建物の北側には高くて大きな明りとり窓が設えられていて、一目で「あ!ここがアトリエだ!」って解りますね)
アトリエ内は見学することもでき(撮影は禁止でした)小磯さんの作品に度々登場する椅子やリュートなど色々なモチーフがそのまま置かれ、書棚には大型の画集や美術書が並び、壁には新制作派協会(現 新制作協会)展のポスターやピカソやマネ(だったと思う)の複製画が貼られたままになっていました。
また、アトリエのドアや窓枠は、前日みた旧シャープ邸(萌黄の館)に似たペールグリーンで塗られていて、明るく優しい上品な雰囲気でした。
そういえば、私の先生のアトリエも、ドアや窓枠がペールグリーンだったなぁ。偶然かなぁ?
もしかして、この色、製作中の絵の邪魔にならず、目が休まる色なのかもしれないな。
作品展示室では「小磯良平作品選Ⅱ 油彩・素描・版画・挿絵原画展」と「コレクション企画展示 人、ヒト、Figure展」が開催されていて、ゆったりと心ゆくまで鑑賞することができました。
小磯さんの代表作は、これまでテレビ番組や画集などで見る機会も多く、竹橋の国立近代美術館では戦争画を目にしていたのですが、よくよく考えてみると、これだけ纏まった数の本物を観たのは初めてだったのでした。
今回、兵庫県立美術館と小磯記念美術館で、数多くの実物に接して気がついたことは、じっくり観るとカンヴァス地が部分的に透けて見えるくらい薄塗りで、筆跡を残しタッチを上手く生かして、量感や質感を上手く出していることでした。
そして、つくづく、厚塗りしたり、あれこれマチエールに凝ったりしないサラッとした絵なのに、すごく魅力的で存在感があるのは、ああ、やっぱり並外れたデッサン力によるところが大きいな~と思ったのでした。
また、人物画ばかりでなく、造形的な静物画も数多く観ることができ、とても勉強になりました。藝大の教員だった頃の実験的ともいえる作品も、とても興味深かったです。
それから、今まで観る機会の少なかった戦争画のための小品やスケッチも観ました。
生前、戦争画について語ることのなかった小磯さんが友人あてに送った手紙の中から戦争画に関するものが発見されたと言うニュースを旅行前に知り、「そうだろうなぁ、あんな穏やかで温かな絵を描く人が、好きで戦争画なんて描くはずないよ」って思っていたところだったので、それらを目の前にして何だか複雑な思いにとらわれました。
その書簡が、9月15日から11月18日まで、この美術館で公開されているのだそうです。期間があえば私も見たかったです。
「戦争画の在り方批判 小磯良平の書簡発見」神戸新聞ニュース