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25 September 2007

神戸市立小磯記念美術館

Koiso01神戸滞在中、神戸港に浮かぶ六甲アイランド内にある神戸市立小磯記念美術館にも立ち寄ってみました。
(余談ですが、この時、乗った六甲ライナー。 車窓から海を眺めていると、突然、目の前が真っ白に! 沿線に建つ集合住宅のプライバシーを守るため、一定区間、窓ガラスが白く曇る仕組みになっているんですね。それにしても、ビックリしました)

Koiso04神戸出身の洋画家 小磯良平(1903~1988)の遺族から神戸市へ寄贈された2000点に及ぶ作品、蔵書、資料、アトリエを保存し展示する目的で作られた美術館は、ほどよい規模のシックな佇まいで、緑いっぱいの中庭には、かつて住吉山手にあった自宅&アトリエのアトリエ部分が移築されていました。

Koiso05建物の北側には高くて大きな明りとり窓が設えられていて、一目で「あ!ここがアトリエだ!」って解りますね)

アトリエ内は見学することもでき(撮影は禁止でした)小磯さんの作品に度々登場する椅子やリュートなど色々なモチーフがそのまま置かれ、書棚には大型の画集や美術書が並び、壁には新制作派協会(現 新制作協会)展のポスターやピカソやマネ(だったと思う)の複製画が貼られたままになっていました。

Koiso02また、アトリエのドアや窓枠は、前日みた旧シャープ邸(萌黄の館)に似たペールグリーンで塗られていて、明るく優しい上品な雰囲気でした。
そういえば、私の先生のアトリエも、ドアや窓枠がペールグリーンだったなぁ。偶然かなぁ?
もしかして、この色、製作中の絵の邪魔にならず、目が休まる色なのかもしれないな。

Koiso03作品展示室では「小磯良平作品選Ⅱ 油彩・素描・版画・挿絵原画展」と「コレクション企画展示 人、ヒト、Figure展」が開催されていて、ゆったりと心ゆくまで鑑賞することができました。

小磯さんの代表作は、これまでテレビ番組や画集などで見る機会も多く、竹橋の国立近代美術館では戦争画を目にしていたのですが、よくよく考えてみると、これだけ纏まった数の本物を観たのは初めてだったのでした。

今回、兵庫県立美術館と小磯記念美術館で、数多くの実物に接して気がついたことは、じっくり観るとカンヴァス地が部分的に透けて見えるくらい薄塗りで、筆跡を残しタッチを上手く生かして、量感や質感を上手く出していることでした。
そして、つくづく、厚塗りしたり、あれこれマチエールに凝ったりしないサラッとした絵なのに、すごく魅力的で存在感があるのは、ああ、やっぱり並外れたデッサン力によるところが大きいな~と思ったのでした。

また、人物画ばかりでなく、造形的な静物画も数多く観ることができ、とても勉強になりました。藝大の教員だった頃の実験的ともいえる作品も、とても興味深かったです。

それから、今まで観る機会の少なかった戦争画のための小品やスケッチも観ました。
生前、戦争画について語ることのなかった小磯さんが友人あてに送った手紙の中から戦争画に関するものが発見されたと言うニュースを旅行前に知り、「そうだろうなぁ、あんな穏やかで温かな絵を描く人が、好きで戦争画なんて描くはずないよ」って思っていたところだったので、それらを目の前にして何だか複雑な思いにとらわれました。

その書簡が、9月15日から11月18日まで、この美術館で公開されているのだそうです。期間があえば私も見たかったです。
「戦争画の在り方批判 小磯良平の書簡発見」神戸新聞ニュース

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小磯良平の書簡発見(神戸新聞より)

「戦争画の在り方批判 小磯良平の書簡発見」
2007月8月16日付 神戸新聞ニュースより転載

Koiso_letter  神戸生まれの昭和を代表する洋画家・小磯良平(1903~88年)が戦時中、「戦争画」の在り方や画壇の停滞ぶりを批判する内容の手紙を友人の画家に送っていたことが十五日までに、神戸市立小磯記念美術館の調査で明らかになった。小磯は戦中、陸軍の依頼で戦争画の大作を何点も描き評価を得たが、戦後はこれら戦中の作品について沈黙を守った。手紙は、戦時下の小磯の本音や苦悩を示す初の資料として貴重な ものといえる。(堀井正純)

 見つかったのは、岡山県へ疎開中の画家・内田巌(いわお)(1900~53年)にあてた手紙三十八通。神奈川県内の内田の遺族の元に保管されていた。
 注目されるのは、終戦前年の1944(昭和19)年12月31日付の一通。当時、画壇でも自由な表現は困難で、小磯は「戦争画も純粋芸術と称する絵も同じく多少ともに病気にかかってゐる」と画壇全体が力を失っている状況を憂慮。
 「藤田(嗣治)が戦争画をかいても猪熊(弦一郎)がかいても(中略)昔の絵と一寸も異はない(中略)これでよいのか」と、戦争画が美術界の発展に役立ってないことを指摘、批判している。また、手紙には「戦争美術のタイコをヂャンヂャンたたいても何もならない」という一文もあった。
 小磯は戦前から若手の実力派として活躍。戦中は従軍画家として四度、中国などへ赴き、作品を発表。「娘子関(じょうしかん)を征(ゆ)く」で芸術院賞を受賞するなど高く評価された。だが、戦後は戦争画については黙して語らず、画集への収録も許さなかった。
 今回、調査に当たった廣田生馬(いくま)学芸員(40)は「内田あての手紙は、小磯と戦争画、当時の美術界と戦争との関係を再考するための一級の資料。かっとうを抱えながら、過酷な時代を生きた画家の生々しい心情が伝わる」と評価。「やや遠回しな言い方だが、弾圧を受ける恐れもある中での言葉には重みがある。相手が盟友でリベラルな思想を持つ内田だからこそ書けたのでは」としている。手紙は、同市立小磯記念美術館で九月十五日から公開予定。

「戦争画」 戦時中、軍部は国民の戦意高揚のために、藤田嗣治、宮本三郎ら数多くの画家たちに戦争記録画を描かせた。このうち藤田は戦後、戦争協力の責任を問われ、日本を離れフランスへ帰化した。戦争画は長年、美術界のタブーとして語られることが少なかったが、近年、その美術的な価値や意味を再検証する動きが出ている。

【画像】発見された小磯良平の手紙など=神戸市立小磯記念美術館(撮影・藤家 武)

(注)見やすくするために、文中の年号に使われていた漢数字を、一部算用数字に変換しました。

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18 September 2007

神戸街歩き

Thomas旅行初日、大きな荷物をホテルに投げ出して、早速、街歩きへ繰り出しました。
まず三ノ宮駅へ向かい、後は気の向くまま坂道を上ったり下ったり。
初めての街なのに迷子にならなかったのは、北に六甲山、南に神戸港を、いつも感じていられたからかも。

そして「風見鶏の館」という名で親しまれている旧トーマス邸や旧シャープ邸(萌黄の館)など異人館を訪ね、室内も撮影してみました。

●フォト・アルバム 神戸北野異人館

Sharpそれにしても暑かったです〜
東京を出発する前に、ヴォーリズをはじめとする訪ねたい建物を沢山リストアップしたのに、もうそれどころじゃありませんでした。
あんまり暑くて「うろこの家」ですら行くのを忘れちゃったくらいですから。

そんな訳で、結局、行き当たりばったりになってしまったのですが、街には歴史的建物ばかりでなく、新しくて面白い建物も溢れていて、もう見きれな〜い。
とても楽しい街歩きができました。

その中のほんの一部ですが、こちらもフォト・アルバムにしてみました。

●フォト・アルバム 神戸街歩き

今回だいぶ土地勘がついたので、また、ゆっくり散歩したい♪

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12 September 2007

ジョン・ケージ《変化と消滅》より「No.10」

John_cage01ジョン・ケージ?
ふ〜ん、版画家にも、ジョン・ケージって名前の人がいるんだ? へぇ、知らなかったなぁ。
間の取り方や線のちりばめ方が面白い不思議な作品だな。

なになに?
この一枚の作品を制作するため、別の図面やチャートがあるの?

どれどれ・・・
へぇ、随分と緻密で理屈っぽい人ねぇ〜

ありゃりゃ〜
ジョン・ケージって、やっぱり、あのジョン・ケージ?

John_cage02そう! この作品、正真正銘あの作曲家ジョン・ケージのものだったんです!
そう言われてみると、プリペアド・ピアノの音が聴こえてきそうではありませんか?

      ◇  ◇  ◇

John_cage03思いがけない場所でのジョン・ケージとの出会い、それは、兵庫県立美術館 − 芸術の館の薄暗い版画展示室の中ででした。

彼の版画は、シャガール、ミロ、アンソールなど数多くの版画作品が壁にかけられた、わりあい大きな展示室の中央に置かれたガラスケースの中で、他の作品群とは全く違う雰囲気を漂よわせていました。

John_cage04現在、この美術館にはジョン・ケージの作品が35点所蔵されているそうで、これからもコレクションが増えていったらいいですね。

展示室は照明がかなり落としてある上に、どうしても天井の照明がガラスに映りこんでしまい上手く撮れなかったけど、めったにない機会を逃したくなくて何とかカメラに収めてきました。

   ◇  ◇  ◇

ところで、兵庫県立美術館 − 芸術の館は、前身の兵庫県立近代美術館のコレクションを引き継ぎ、2002年4月に開館したばかりの新しい美術館だそうで、安藤忠雄さんが設計を手がけられた建物は巨大でした。

神戸港に面した側の大階段と大きな庇は、とても印象的で、城砦のようなゴツゴツした壁面も、なかなかの迫力です。
一方、内部は打ちっぱなしのコンクリート壁の仕上がりが、すべすべと美しく、あちこち見てまわっているだけで、どんどん時間が経ってしまいそうでした。

表参道ヒルズや東京ミッドタウンなど最近の他の安藤さんの作品に比べると、とてもシンプルでストイックな印象すら感じられ、ゆったりと作品を展示し鑑賞できる空間、更にはそれら美術作品を安全に収蔵保管する空間としての機能を、とても大切にしているのだろうなと思いました。

それから、この美術館、前述のとおり展示作品の撮影が許可されているんですよ♪
思わずヨーロッパの美術館みたい!と嬉しくなって、小磯良平記念室金山平三記念室でも撮影させていただきました。

それにしたって、1989年から継続的に、彫刻作品など手で触って鑑賞する企画が行われていたり、作品の撮影が許可されていたり、兵庫県立美術館の学芸員さん、なかなかやりますね〜♪
しかも、ジョン・ケージの作品まで積極的にコレクションしているなんて、ほんと素晴らしい美術館です。
すごく気にいっちゃいました。

●フォト・アルバム 兵庫県立美術館 − 芸術の館

【画像】上から

ジョン・ケージ
《変化と消滅》より「No.10」
1979ー82年
エングレーヴィング、ドライポイント、フォトエッチング・紙
29×54.3cm

《『変化と消滅』No.10のための制作図面 チャート》
1979ー82年
鉛筆・水彩紙
29×66.1cm

《『変化と消滅』No.10のための制作図面 Run2》
1979ー82年
鉛筆・トレーシングベーパー
48×60.7cm

《『変化と消滅』No.10のための制作図面 Run4》
1979ー82年
鉛筆・トレーシングベーパー
48×60.8cm

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10 September 2007

はじめての神戸♪

Kobe01先日、ちょっと遅めの夏休みをとり、阪神間を旅してきました。
生まれて初めて訪ねた神戸・大阪など関西の街々は、予想していた以上に快適で楽しく、見所もいっぱい。
帰宅して早々「また行きたい!」って思ったほどでした。

実は私・・・
正直に告白すると・・・

Kobe02関西では電車に乗るのに列を作らない上に割り込みも当たり前らしいし・・・
おねえさんたちはギラギラ派手そうだし・・・
おばさんたちは図々しくて怖そうだし・・・

ビクビク! ドキドキ!

そうなんです、あまり良い印象を持っていなかったのです。
でも、それらは全て杞憂でした。
やっぱり、実際に自分の身体と心で感じてみなくちゃ解らないものですね。長いこと勝手な思い込みをしていた自分に反省もしたのでした。

Kobe03さて、写真は宿泊したホテルの部屋からの眺めです。
須賀敦子さんが1953年初めてのヨーロッパ留学へと旅立った神戸港と、六甲の山並みが一望でき、ちょっぴり感動。
そして、夜になると、その六甲山の山腹に神戸市のマークと錨のマークが灯る、オシャレな演出もされてました。(光が弱く私のカメラでは捉えられず、残念)

という訳で「大阪~神戸」超初心者の旅は始まったのでした。

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