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19 April 2007

プッチーニ《西部の娘》@新国立劇場

La_fanciulla_del_west2007年4月18日(水)
新国立劇場 オペラ劇場

昨夜、以前から、とても楽しみにしていた《西部の娘》を観てきました。

目的はただ一つ!
2003年、あの衝撃の《フィガロの結婚》を観せてくれたアンドレアス・ホモキの新作が見たかったからです。

そして今回も、その期待に違わぬ、とてもシンプルで、どこか上品ささえ感じてしまう、なんてったって美しい舞台でした。(^^)
現代に読み替えしたものだったけれど、よくありがちな意味不明で過剰な演出に陥ることもなく、奇を衒ったところもなく、安心して音楽に身を任せていられました。
やっぱり好きです、こういう舞台!(^^)

幕が上がると、そこにはキチンと積み上げられた大量の段ボール箱でつくられた壁。
様々ないでたちの男達が押す、たくさんの荷物の詰まったカート。
酒瓶や煙草や食料などの積まれたワゴン。
そして、第3幕には、天井から降りてきた太いロープ。

そう、たったこれだけ。

でも、この段ボール箱が徐々に崩され、大きな亀裂ができたり、隠れ場所ができたりと、その変化が面白いのです。人の動かし方も上手く、造形的にも計算されつくされていて、ほんと感心させられるばかりでした。

それにしても、ホモキさんて、大きな箱を使って、かくれんぼするのが好きなのかなぁ?(^^)
いずれにしても、箱を積み上げたり崩したりすることで立体的な舞台を作り上げる腕は素晴らしいと思います。
1階2階席には縁の無い私なので比較はできませんが、この立体感をより面白く感じられるのって3階4階席からの角度かもしれないって思ったりもしました。

ちなみに、段ボール箱の制作協力をしたレンゴー株式会社によれば、その数1500個あまりとか!
消防法により難燃性も確保されていたそうです。

それから、実は《西部の娘》って、今まで一度も聴いたことありませんでした。(^^;
昨夜も、第一幕のミニーとジョンソンの歌を聴きながら「あ~ なんてつまんない話なんだろ~ たいくつ~ ねむぃ~」って、途中かなり白けた気分になってました。
なのに、いつの間にかひきつけられ、最後はイイ気分になっていたから不思議です。(^^)

それは、ホモキ演出によるばかりでなく、シルマー&東フィルが良かったせいもあるかな?
歌手のみなさんや合唱とのバランスもよく、安心して聴いていられました。特にジョンソン役のアティッラ・B.キッシュさんの迫真の演技にグッと来ました。

あ、忘れてはいけない!合唱団の衣裳が凄かった!
アフリカン、インディオ、刺青のおにいさん、日の丸のハチマキ・・・と挙げたらキリが無いくらい様々な国や民族を現すもので、全員一列に並んだところをジ~ックリ眺めながら、自己紹介でも聞いてみたいところでした。(^^)

   ◇  ◇  ◇

プッチーニ《西部の娘》

指揮:ウルフ・シルマー
演出:アンドレアス・ホモキ

ミニー:ステファニー・フリーデ
ジャック・ランス:ルチオ・ガッロ
ディック・ジョンソン:アティッラ・B.キッシュ
ニック:大野 光彦
アシュビー:長谷川 顯

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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05 April 2007

サン・テグジュペリ『星の王子さま』

Le_petit_prince05昨日、ニュースを見ていて、サン・テグジュペリの『星の王子さま』の挿絵原画が、山梨県内の美術館「えほんミュージアム清里」の所蔵品の中から発見されたことを知りました。

47点あるとされている原画のうち、現在、行方がわかっているのは、今回、見つかった「実業屋」を含め、世界中で、たった6点だけなのだそう。
4月25日から松屋銀座で開かれる「サン=テグジュペリの星の王子さま展」で、公開されるとか。あぁ~行っちゃいそうな予感。(^^;

Le_petit_prince04_1ところで、幼い時に出会い、大人になっても繰り返し読みつづける本というのが誰にでもあると思うけれど、サンテックスの『星の王子さま』は、私にとって、まさにそんな一冊。

子供の頃、最初に読んだのが、あの名訳の誉れ高い、内藤濯(あろう)さんのものでした。その後、原作のフランス語版に手を出したこともあったっけな。(^^;
そして、フランスの俳優ジェラール・フィリップの朗読CDまで持っていたりします。(^^; それはまるで音楽を聴いているような美しい朗読です。

Le_petit_prince01そういえば、須賀敦子さんの著書『遠い朝の本たち』の中に「星と地球のあいだで」というエッセイがあり、フランス語を学びはじめたばかりの須賀さんと『星の王子さま』との出会いが綴られています。

   ◇  ◇  ◇

最初は、なんだか子どもの本みたいなものを、と不満だったのが、読みすすむうちに、きらめく星と砂漠の時空にひろがる広大なサンテグジュペリの世界に私たちは迷いこみ、すこしずつ、深みにはまっていった。いや、迷っていたのは、クラスで私ひとりだったかもしれない。

Le_petit_prince03それまでに読んだどんな話よりも透明な空想にいろどられていながら、人間への深い思いによって地球にしっかりとつなぎとめられたサンテグジュペリの作品は、他にも読むべき古典がたくさんあるのをながいこと私に忘れさせるほど、夢と魅惑に満ちていた。
(須賀敦子著『遠い朝の本たち』より)

   ◇  ◇  ◇

確か、ジェラール・フィリップに、とても興味を持ってらしたはずの須賀さん、この朗読の存在をご存知だったのだろうか?
そして、もしご存知で、耳にされていたとしたら、どんな感想をもたれたのか知りたかったなぁ。

Le_petit_prince02さて、『星の王子さま』は、2005年に著作権が切れたのをきっかけに、現在、さまざまな新訳が入手できるようになりました。
私も、さっそく、池澤夏樹さん、野崎歓さんの新訳を読みました。

訳者それぞれサンテックスの原作への熱い思いがあり、その解釈や言葉の使い方も、おのおの工夫がこらされ、読み比べてみるまでもなく、サンテックスが『星の王子さま』に込めた思いを、訳者を通して様々な角度から読み取ることができ面白いです。

そして、この作品の最大の魅力は、どの訳であろうと、素直な気持ちが取り戻せ、自分を見つめ直せることかなぁ。(^^)

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