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26 February 2006

一柳慧《愛の白夜》世界初演

white_nights2006年2月24日(金)
神奈川県民ホール 大ホール

神奈川県民ホール30周年を記念して委嘱されたオペラ《愛の白夜》を観てきました。

お話は、1940年 リトアニアの首都カウナスの日本領事館に勤務する領事杉原千畝が、ナチスの迫害から逃れて来たユダヤの人々から日本通過のビザ発給を求められ、悩み苦しんだ末に日本外務省に背いて発給を決意するまでを、杉原領事夫妻の愛や若い恋人たちの愛、そしてゲシュタポの暗躍する当時の混乱した状勢を背景に描いたものでした。

もちろん最初から、ワクワク楽しい作品ではないことは解っていたのですが、本当にずっしりと重たい作品でした。
でも、決して後味の悪いものではありませんでした。

その理由は、演出がとても良かったこと。音楽が解りやすかったこと。歌手が粒ぞろい。コンテンポラリーダンスが効果的に取り入れられていたことなど、複数の要因が重なったからだと思います。
きっと時間をかけて、作曲者、演出家、振付家、歌手、ダンサーなどスタッフが一丸となって作りあげてきたのだろうなぁと、その制作過程が想像できる、とても丁寧な仕上がりの、好感の持てる舞台でした。

舞台美術は、鉄条網に囲まれた半円の中に傾斜のついた台が全幕を通して常に置かれていたシンプルなものでしたが、その台を回転させることで場面を切り替える、なかなか優れたものでした。
それから、森の中や駅構内などを表現するための舞台真上からの照明が、とても斬新で効果的でした。
演出家の白井晃さんは、オペラの演出は今回が初めてとのことでしたが、これからも、どんどんやってほしいなと思いました。

コンテンポラリーダンスが登場したのも新鮮でインパクトがありました。
ダンサーの動きだけで、ユダヤ人の強制収容所のガス室におくられてゆく様子を描き出し、迫害されるユダヤ人の苦しみを象徴的に表現した場面など、先日観たプレルジョカージュの《N》とも共通するものがあり、私にとっては今回のオペラの中で一番強く印象に残る場面となりました。

それにしても、神奈川県民ホール大ホールは、ガラス張りのロビーから横浜港の美しい夜景を眺められるところがイイですね。
私も久しぶりに、幕間に港の眺めを楽しむことができました。

   ◇  ◇  ◇

オペラ《愛の白夜》3幕5場

作曲:一柳慧
台本:辻井喬
指揮:外山雄三
演出:白井晃

上原専治:井原秀人
上原雪子:天羽明惠
アギリア:塩田美奈子
ヨーニス:鈴木准
バルファティ:近藤政伸
オットー:平野忠彦
ダニエル少年:鵜木絵里
合唱:東京オペラシンガーズ
ダンス:北村明子 レニ・バッソ
管弦楽 :神奈川フィルハーモニー管弦楽団

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