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21 October 2005

須賀敦子『こうちゃん KO-CIAN』

kochan

「あなたは こうちゃんに あったことが ありますか。」

こんな一文から、このお話は始まります。

こうちゃんて、だれだろう。
こうちゃんて、いったいどんな子なんだろう。
色んなことを考えながら読み進むうち、ふと気がつくと自分の中のこうちゃんに出会うのです。

いつの間にか季節が巡ってゆきます。
気がつくとイタリアの古い街を歩いています。
酒井駒子さんの美しい挿し絵と、優しいことばであふれた須賀さんの文が、読むものを、ふっと涙があふれてきそうな懐かしい世界につれていってくれる極上の絵本です。

初出は、1960年、ミラノのコルシア・デイ・セラヴィ書店から発行された「どんぐりのたわごと」第7号。
イタリア語でも同時に出版されたそうです。

須賀敦子『こうちゃん』2004年、河出書房新社

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19 October 2005

対談「歴史的都心を豊かに育むイタリア」

atsuko_sugaイタリア文学者でエッセイストの須賀敦子さんの著書は、言葉一つ一つに優しいリズム感と品のよさが漂っていて、大好きなのだけど、ご自身の生き方も、ピンと一本筋がとおっていて、私の憧れの人です。

なんと、その須賀さんと、あの陣内さんの対談記事を発見してしまいました。

「歴史的都心(チェントロ・ストリコ)を豊かに育むイタリア」

初出は、日本ホームズというハウスメーカーが出しているらしい1993年4月15日の「Mr.&Mrs」という宣伝情報誌のようですが、『須賀敦子全集 別巻』 2001年、河出書房新社にも入っているので、今でも読むことができます。

ここでもイタリアの小さな地方都市が持っている底知れない魅力や、古いものを残し新しいものと融合させてゆくために辛抱強く取り組んでゆくイタリア人の価値観などが、お二人によって語られています。

規制が甘いゆえ大企業的なスクラップ&ビルドな建設産業化してしまった日本の建築と、形式の規制をなくし、韻もふまず、シブラルも定型も捨ててしまった結果、貧しくなってしまった日本の詩が並べて語られているのも、建築史家と文学者の対談らしいなぁと、妙に感心してしまいました。

ちなみに、イタリアは建築物に対しての規制が厳しいために、色々な次元から考えた結果、総合的空間デザインとなり、手作り的な温かみもあって、人々も生活しやすいものとなっていくのだそうです。

それにしても、須賀さんと陣内さんが、こんなところで繋がっていたなんて、ちょっと嬉しい!

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16 October 2005

ロッシーニ《セビリアの理髪師》@新国立劇場

2005年10月14日(金)
新国立劇場 オペラ劇場

一昨日、新国立劇場の新演出《セビリアの理髪師》のプレミエへ行ってきました。

新国立劇場 ロッシーニ《セビリアの理髪師》

1970年代風のカラフルでポップな舞台は、なかなか凝った造りで、演出も楽しかったのだけれど、残念ながら音楽面が今ちょっとでした。
ロッシーニ特有のたたみ込むようなウキウキ感がなく、いま一歩のりきれていない感じでした。

これは指揮者のせいなのかなぁ?
それとも歌手のせいなのかなぁ?

きっと新国初登場の歌手ばかりだったので緊張して調子が出なかったのかもしれないし、2幕目は少し改善されていたようなので、日を追うごとに、もっともっと良くなるかもしれないですね。

それにしても、どうして、今回、新演出にしたのだろう?
以前の横にスライドする大仕掛けな舞台も悪くはなかったのに・・・

私としては、今回の回転式舞台とポップな美術も好きだけど、せっかく同じお金をかけるのなら、別の演目を新たなレパートリーとして加えて欲しかったな。
ロッシーニなら《チェネレントラ》とか・・・ 他にも色々あると思うのだけどなぁ。

   ◇  ◇  ◇

ロッシーニ《セビリアの理髪師》

指揮:ニール・カバレッティ
演出:ヨーゼフ・E. ケップリンガー

アルマヴィーヴァ伯爵:フェルディナンド・フォン・ボートマー
ロジーナ:リナート・シャハム
バルトロ:柴山 昌宣
フィガロ:ダニエル・ベルチャー
ドン・バジリオ:フェオドール・クズネツォフ

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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